■鮮度のいいうちに調理開始! 果たして味はどんな感じ?

茹でて赤くなったクロカワムシ

 鮮度のいいうちに調理したい。少々残酷な気もするが、水道水で軽く洗って生きたままクロカワムシたちを熱湯の中へ投入した。火の通り加減が分からないけど、イナゴ(これも郷土食)同様に、赤みが出てくきたらいい塩梅だと思う。さらに砂糖醤油に生姜...... で煮詰めたら佃煮になるのだが、これはスーパーでも売られている定番の料理。正直、こうなってしまうと味自体はイナゴでも一緒。食感も似たようなものな気がする。せっかくなのでシンプルに素材の味を感じたい。茹でただけで食べることにした。
 湯上りの彼らは艶やかに輝き美しい。生きているときはグロテスクだったが、見た目もずいぶんと食べやすくなった。あらためて観察すると、個体差がそれなりにあるようで興味深い。
 意を決して口の中へ。噛んだ瞬間、表面の皮がわずかに抵抗になり、柔らかくジューシーな身の感触が続く。顔と脚がやや気になるが、それも野性味として受け入れよう。肝心の味だが、塩を振ったわけではないのにわずかに塩味がする。不思議だが絶妙な塩加減(?)だ。しかもうっすらとした、でも確かな磯の風味が鼻腔に抜けていく。彼らの食料である藻の風味なのかもしれない。
「なんだ。旨いじゃないか!」

初夏の日没直後。羽化したヒゲナガ(クロカワムシの成虫)が乱舞する。こんなタイミングで大物のトラウトが釣れる

 今まで食べなかったのをほんの少し...... 後悔した。僕はほとんど酒を飲まないのだが、きっと日本酒に合うんだろうな。そんなことを思いながらも、羽化したヒゲナガが乱舞し、トラウトたちが狂ったようにライズする川面を想像した。もちろん、そのとき僕は爆釣している予定だ。