■沖縄にはどれくらい山があるの?

 日本全国で、「もっとも登山のイメージが薄い都道府県はどこか?」というアンケートをとった場合、おそらく1位になるのは、高尾山や奥多摩の山々がある東京都ではなく、沖縄県ではないだろうか? 

 しかし、四方を海に囲まれた日本唯一の亜熱帯海洋性気候の県にも、実は山がある。沖縄に住んでいる人、住んだことがある人、何度も足を運んでいる人には常識だろうが、あまり詳しくない人にとっては、まぶしい太陽に照らされた青い海というパブリックイメージに邪魔されて、“沖縄”と“登山”はなかなか結びつかないのが実際のところだろう。

■広い島の多くに山があるが、なぜか宮古島にはない

沖縄最高峰の於茂登岳。古くから山岳信仰の対象になっている山でもある。新石垣空港からクルマで約30分

  では、実際にどのぐらいの山があるのだろうか? 下に主な山をリストアップしてみた。このように、沖縄全土で35以上あるのだ。沖縄県には160もの島があるが、そのなかで山があるのは、最も広い本島(1,206.98平方キロメートル)を始め、西表島(289.62平方キロメートル)、石垣島(222.24平方キロメートル)、久米島(59.53平方キロメートル)、与那国島(28.95平方キロメートル)など比較的大きな島に限られる。ただし、面積第4位の宮古島(158.87平方キロメートル)には、山らしきものはない。

 沖縄最高峰は石垣島にある於茂登岳(おもとだけ)で、標高525mだ。スペック的には高尾山よりちょっと低いだけ。立派な山である。この山は、江戸時代、幕府が正保元年(1644年)に諸大名に命じて国単位で作らせた国絵図『正保国絵図』に、琉球で唯一名前が記された山である。地元では「ウムトゥダギ」とも呼ばれ、この「ウムトゥ」は「島の大本」といった意味があるともいわれる。

 また、2番目に高い与那覇岳(503m)、3番目の桴海於茂登岳(ふかいおもとだけ  477m)などは、いずれもきちんと登山道が整備されている。現地にはきちんと登山文化があり、山岳会的なグループも存在している。

■沖縄登山の醍醐味は、標高の高さとは別のところにある

 その標高からして、登る山としては物足りなさを感じる人がいるかもしれないが、それを補うのが独自のロケーションだ。沖縄の山ならではの、山から海を望む眺望は絶品。また、南国の気候がもたらす独特の植物も魅力的なのである。たとえば、於茂登岳の山頂付近はリュウキュウチクに覆われているのが特徴。

 また、北側の山麓はカンヒザクラの自生地があり、国の天然記念物に指定されている。満開の時期は見ものである。

カンヒザクラを漢字で書くと「寒緋桜」。その花びらの色は文字通り、赤が濃い桜色である

●沖縄にある主な山(標高順)

▶於茂登岳(石垣島/525m)
▶与那覇岳(沖縄本島/503m)
▶桴海於茂登岳(石垣島/477m)
▶西表島〈古見岳〉(西表島/469m)
▶八重岳(沖縄本島/453m)
▶嘉津宇岳(沖縄本島/452m)
▶ウマヌファ岳(石垣島/450m)
▶安和岳(沖縄本島/432m)
▶奈良原岳(魚釣島/362m)
▶古巣岳(沖縄本島/391m)
▶ネクマチヂ岳(沖縄本島/360m)
▶名護岳(沖縄本島/345m)
▶三角山(沖縄本島/340m)
▶ぶざま岳(石垣島/321m)
▶屏風岳(魚釣島/320m)
▶塩屋富士(沖縄本島/317m)
▶宇江城岳(久米島/310m)
▶野底岳(石垣島/282m)
▶本部富士(沖縄本島/240m)
▶宇良部岳(与那国島/231m)
▶デーサンダームイ(沖縄本島/230m)
▶バンナ岳(石垣島/230m)
▶屋良部岳(石垣島/216m)
▶石川岳(沖縄本島/204m)
▶だるま山(久米島/202m)
▶城山(伊江島/172m)
▶大本田 ( 渡 名 喜 島 /165m)
▶熱田岳(沖縄本島/160m)
▶運玉森(沖縄本島/158m)
▶カラ岳(石垣島/135.9m)
▶千歳山(久場島/117m)
▶信天山(久場島/105m)
▶大岳(小浜島/99m)
▶テンダハナタ(与那国島/75m)