知らないことばかりの「デカい山」の世界。とてつもなく大きく、神秘に満ちたその世界をちょっとナナメな視点からクローズアップしていきたい。
■エベレストは、地球上でもっとも高い山ではない
エベレストの高さが約8,848mというのは広く知られている。この8,848mというのは、「標高」である。標高とは、平均海面からの高さを示す数字だ。しかし、地球上には海底火山というのがある。そのなかでも、ハワイにあるマウナ・ケア山は海面から出ている部分の高さは4,200mながら、海底からの高さは1万203mもあるのだ。したがって、これを世界で最も高い山とする見方もある。
では、フレームを一気にアップさせ、太陽系全体ではどうだろうか? 地球以外の惑星にエベレストよりも高い山はあるのだろうか? ここで前記の話が重要になってくる。というのも、他の惑星では"海面との距離"という基準を設定するのが不可能だからである。そこで、ここでは山麓と頂上との高さの差を基準としたい。その条件なら答えは「イエス」だ。
■火星には1万m超の山が4つあり、最大は2万mを超える
太陽系で物理的に山が存在し得る地球以外の惑星は、水星、金星、火星。他はガスや氷などが主成分であるため山はないとされている。ここでいう“山”は、樹木が生い茂るあの山とはイメージが違う。クレーターなど、地面が突出して隆起した部分はすべて“山”ということにしたい。
特に大きな山がある惑星は火星だ。1万mを超える山が4つ。しかも、最も高いオリンポス山は2万6000m(諸説あり)。エベレストの約3倍の高さだ。裾野の直径は550km以上あり、斜面の斜度は極めて緩やか。楯状火山で、山頂部のカルデラの最長部は80km、その深さは3km以上とすべてが超弩級!! 死火山だと思われていたが、近年、240万年前の噴火の形跡が発見され、活火山である可能性が考えられている。つまり、今後も噴火してデカくなるかもしれないのだ。
他に1万m峰があるのは金星。1978年、宇宙探査機が軌道に入ることで最高峰マクスウェル山の存在が確認された。ただし、ここまでは惑星の話で、小惑星、衛星も含めると、山のある天体、そしてデカい山は他にもある。木星の衛星「イオ」には、1万m級の山が3つ確認されているし、2011年には小惑星ベスタに、最高部がオリンポス山と同程度のクレーターが確認された。
とはいえ、2022年現在、人類が降り立った地球以外の天体はいまだ月のみ。したがって、エベレストの「人類が登頂したもっとも高い山」の地位は、当分の間は揺るぎそうにない。
●太陽系の惑星にあるデカい山ランキング
▶1位:オリンポス山(火星)2万6000m
▶2位:アスクレウス山(火星)1万8100m
▶3位:エリシウム山(火星)1万6000m
▶3位:アルシア山(火星)1万6000m
▶5位:マクスウェル山(金星)1万1000m
▶参考:エベレスト(地球)8848m