貴重な自然に恵まれ、世界自然遺産にも登録されている「屋久島」。亜熱帯から亜高山帯まで豊かな自然が広がるこの島で、代表的な存在が「屋久杉」だろう。世界自然遺産の森を歩けるスポットとしては「白谷雲水峡」や「ヤクスギランド」が人気を集めているが、今回は、登山初心者でも手軽に大自然の散策が楽しめる「ヤクスギランド」について魅力を紹介していこう。

■体力やスケジュールで選べる5つのコース

散策の拠点となるヤクスギランドの管理棟。ここで園内のコースマップや最新情報をチェックしてから出発しよう

 ヤクスギランドは、標高1,000〜1,300mに位置する広大な自然休養林のひとつ。その名の通り、屋久島を代表する巨木「屋久杉」を間近でじっくりと鑑賞できる観光スポットだ。広大な森の中には5つの散策コースが整備されており、体力やスケジュールに合わせて好みのルートを選ぶことができる。整備された歩道を30分でめぐれる最短コースから、天柱石が有名な「太忠岳(たちゅうだけ)」への登山も味わえる3時間30分の本格コースまでバリエーションが幅広い。今回はそんな5つのルートの中から、ライトトレッキング+登山道も味わえる「つつじ河原コース」を体験してきた。

世界自然遺産の森を歩ける「ヤクスギランド」

■吊り橋と清流を楽しめる「つつじ河原コース」

空洞になった根元がまるで天然のゲートのようになった「くぐり栂」

 つつじ河原コースの距離は約2㎞、コースタイムは1時間20分ほど。管理棟から園内に足を踏み入れると、まずは杉ではなく「くぐり栂」という大木が天然のゲートのように出迎えてくれる。これをくぐり抜け、小川に架かった木の橋を越えると、「切り株更新」を間近に見られるポイントがある。江戸時代、この森では屋久杉の伐採が行われており、切り出された木材は屋根の材料などに使う薄い板「平木(ひらぎ)」へと加工されていたという。園内には、その切り株が今も残り、その上に新たな木が芽吹いて力強く育っている。

豊かな自然を感じながら進むことができる、きれいに整備された遊歩道
伐採された太い切り株の上に、新たな命が芽吹いて育つ「切り株更新」の姿

 また、伐採後に利用されなかった枝や幹、根株などはそのまま森に放置されたが、屋久杉は非常に多くの樹脂を含み、その防腐効果のおかげで200〜300年が経過した現在でも腐ることなく森の中に残り続けている。これらの残材は「土埋木(どまいぼく)」と呼ばれている。森の屋久杉が完全に伐採禁止となった現在、島のお土産などで目にする屋久杉の工芸品や箸などは、こうした江戸時代の土埋木や、台風などで自然に倒れてしまった倒木が使われているのだとか。

木漏れ日が美しいうっそうとした森。苔むした幹も味わいがある

■吊り橋を越えて「つつじ河原」へ

原生林に佇む「千年杉」。樹齢1000年を超える巨木ならではの風格がある

 森の奥へと歩みを進め、まず最初に出会う屋久杉の巨木が「千年杉」だ。森に太い木はたくさんあるが、こうした名前が付いた木はひときわ太く大きく存在感がある。さらに先へと道を進み、勢いのある流れの荒川に架かった吊り橋を渡っていく。

 この吊り橋を抜けたあたりから本格的な登山道がはじまり、少し息が上がってきたところで現れる分岐を左に折れると、緑に覆われた「苔の橋」が姿を現す。この周辺の、荒川沿いに広がるエリア一帯が「つつじ河原」という景観スポットとなる。

荒川の上に架かる「荒川橋」。渡るときに少し揺れるのでちょっぴりドキドキする
吊り橋の上から見下ろした、荒川の豪快な流れ
先ほどの吊り橋とはまた違った、しっとりと苔むした趣のある「苔の橋」

 川の近くまで降りることができ、ゴツゴツとした大きな岩に腰かけて透明度抜群の清流を眺めながらひと休みすることにした。眺めもいいうえ、吹き抜けていく涼しい風が心地よく疲れを癒やすのにぴったりだ。

川のすぐ近くまで降りることができる「つつじ河原」。清流を目の前にゆっくり休憩できる