◼️️歩ける世界遺産「熊野古道」

現代の熊野を象徴する、大斎原の大鳥居

 紀伊半島は2,000m級の山岳が密集する一大山地であり、自然が大部分を占める大きな半島だ。人の行き交う要衝からはうかがい知ることのできない奥地ということもあって、山には神々が宿る特別な場所として信仰されてきた。後に伝来する仏教もまた、奥まった熊野の山々に浄土を見いだし、修行道場として栄えていく。そんな経緯があって、高野山の真言密教と吉野・大峰の修験道という異なる信仰の地が、熊野三山とともに共存してきたわけだ。

 異なる三つの宗教が道でつながっているという点は世界的に評価され、2004年に世界遺産として登録される決め手のひとつとなった。紀伊山地の自然があって、そこに人の営みや信仰といったベースが育まれて、文化的な景観が守られてきた。本当に尊いと思う。

 ちなみに、正確には「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産であり、それを構成する主要な参詣道のひとつが熊野古道、という解釈になる。したがって、高野参詣道もまた、紀伊山地にある世界遺産の道だと知っておきたい。

 昨今においては、遠くにある目的地を歩いて目指す、いわゆる「ロングディスタンス・トレイル」を好むハイカーからの視線が熱い。そして、それは国内にとどまらず世界にも通じることのようで、いわゆる“宗教的な巡礼路”のトレイルとして、あるいは“自分の足でたどれる世界遺産”として、海外のハイカーから絶大な人気を博している。たしかに、現地を歩いていると、国外からの旅人が圧倒的に多いと感じる。

 そんな熊野古道を、これから歩いてみたいというハイカーに、僕がまずおすすめしたいのが「中辺路」だ。関西の都市部からアクセスしやすい田辺を起点に、熊野本宮大社へと直接入る、いわば中核の道。まずはここを歩くことが、熊野古道歩きの第一歩となる。