「船釣りは難しそう」「常連ばかりで初心者が行くのはハードルが高い」 そんなイメージを持っていないだろうか。実はその常識、今すぐに捨ててしまったほうがいい。特別な技術も力もいらず、ただ「落として巻くだけ」で、市場にて高値で取引される高級魚「マダイ」が釣れてしまう魔法のような釣りがある。それが、近年爆発的な人気を誇るルアーフィッシング「タイラバ」だ。

 夏のシーズンは、1年の中でも特にマダイが釣りやすい最高のタイミングである。今回は、船釣り未経験者にこそ強くおすすめしたい、夏のタイラバの魅力と、初心者が抱きがちな不安を解消する基本知識を徹底解説する。

■船釣りの常識が覆る。初心者こそ「夏のマダイ」を狙うべき理由

 高級魚であるマダイは、熟練の釣り師が高度な技術を使ってようやく釣り上げるものだと思われがちだ。しかし、季節と釣り方さえ選べば、初心者でもベテランに引けを取らないくらいの大物を釣り上げるチャンスが増えるのだ。

●産卵後の夏はマダイの食欲が爆発する大チャンス

 なぜ「夏」がよいのか。マダイは春に産卵期(ノッコミと呼ばれる)を迎え、産卵行動によって体力を大きく消耗する。産卵を終え体力が回復し始める初夏から夏にかけて、マダイは失った栄養を取り戻すために猛烈な勢いでエサを捕食するようになるのだ。この時期のマダイは好奇心が旺盛で、目の前を通るルアーに対して積極的にアタックしてくる。

 難しいテクニックがなくても、ルアーを動かすだけでマダイが食いついてくる確率が高まるというわけだ。実際、船釣りが初めての女性や子どもが大物マダイを釣り上げる場面も珍しくない。それが夏のタイラバの醍醐味でもある。

夏場は活性の高いマダイが多いので入れ食い状態になる可能性もある

■本当に「落として巻くだけ」 タイラバ釣りのシンプルな仕組み

 そんな食欲旺盛な夏のマダイを狙うのに最適なのが「タイラバ」というルアーフィッシングだ。その仕組みは、拍子抜けするほどシンプルである。

ヘッド(オモリ)とネクタイと針の驚くほどシンプルな仕掛けでマダイが釣れてしまう

●タイラバとは?  ひらひら動くネクタイでマダイを騙す

 タイラバとは、鉛やタングステン(鉛の約1.7倍の比重をもつ素材)でできた重たい「ヘッド(オモリ)」に、シリコン製のヒラヒラとした「ネクタイ」と呼ばれるパーツと針を組み合わせた疑似餌のことだ。生きたエサやコマセ(撒き餌)を一切使わないため、手が汚れることも、強烈なニオイが服につくこともない。虫エサが苦手な女性や子どもでも安心して楽しめるのが大きなメリットだ。

 海中に落とすと、水流を受けたネクタイが艶かしく動き、マダイにはそれがイカや小魚、甲殻類に見えるという仕組みである。

●アクションは一切不要!「一定の速度で巻く」が最大のコツ

 ルアーフィッシングと聞くと、竿を激しくアオったり、複雑な操作をしたりするイメージがあるかもしれない。しかし、タイラバにおける基本動作は「海底まで仕掛けを落とし、着底したらすぐに一定の速度でリールを巻く」これだけだ。力任せにルアーを遠くへ投げる必要もない。足元に落とし、一定のスピードでただひたすらに巻き上げる。この「等速巻き」こそが、マダイを騙す最大のコツである。

●アタリがあっても絶対にアワセてはいけない理由

 タイラバが他の釣りと決定的に違うのが。それは、魚がルアーに食いついた(アタリがあった)瞬間に、竿をアオって針を掛ける「アワセ」という動作を絶対にしてはいけないという点だ。

 リールを巻いていると、突然竿先に「コン、コンッ」というマダイ特有の叩くようなアタリが伝わってくる。筆者もタイラバを始めた当初は、この瞬間に驚いて反射的に竿をアオってしまい、何度もマダイを逃がすという失敗を経験した。アタリがあっても、決して慌ててはいけない。マダイがネクタイの端をかじっている状態なので、そのまま同じ速度でリールを巻き続けるのだ。

 すると次第に「ゴンッ、ゴンッ」と引きが強くなり、やがて竿が海面に突っ込むように引き込まれる。ここで初めて魚が針に掛かったことになり、あとはゆっくりと巻き上げるだけでいい。この駆け引きのドキドキ感は、一度味わうと病みつきになる。

魚からのアタリがあっても、我慢してリールを巻き続けることが重要