■巨岩の森を越え、瑞牆山頂へ
●巨岩の山容を仰ぎ、富士見平小屋へ
瑞牆山荘バス停から登山を開始する。序盤は樹林帯の中をゆるやかに登っていく区間で、いきなり急登が続くわけではない。木漏れ日の差し込む森の中は、夏でも比較的涼しさを感じながら歩くことができる。
しばらく登ると、木々の間から瑞牆山の岩峰群が姿を見せる。遠目にもわかるゴツゴツとした山容は印象的で、これから向かう山頂への期待が高まる場面だ。
登山道はよく踏まれているが、足元には木の根や石もあるため、歩き始めから油断は禁物である。とくに下山時は疲労が出やすい区間でもあるので、登りのうちに道の雰囲気を確認しておくとよい。
瑞牆山荘から約1時間で富士見平小屋に到着する。富士見平小屋は、瑞牆山と金峰山方面の分岐に位置する山小屋で、水場やテント場もある重要な拠点だ。小屋の周辺は開けており、休憩する登山者の姿も多い。ここで水分補給や行動食を取り、山頂への登りに備えたい。
なお、富士見平小屋を出ると、その先には山小屋などの補給ポイントはなく、緊急退避ができるエスケープルートもない。体調面に少しでも不安を感じたり、天候悪化が予測される場合は無理せず瑞牆山荘へ引き返そう。
●桃太郎岩から岩場の急登に挑む
富士見平小屋から先は、いよいよ瑞牆山登山の本番である。小屋を出発すると、しばらくは樹林帯の中を進むが、次第に岩が多くなり、山の雰囲気が大きく変わっていく。途中には沢沿いを歩く区間もあり、清流の音が心地よい。苔むした岩や大きな石が点在し、瑞牆山らしい荒々しい景観が少しずつ現れ始める。
やがて登山道には巨大な花崗岩が次々と現れる。見上げるほどの岩壁や、登山道の脇に立ちはだかる巨岩は迫力があり、まるで天然の岩の迷路を歩いているような感覚になる。
「山頂まであと10分」と記された看板が現れ、白い岩肌の花崗岩が目立ち始めてからは、瑞牆山の魅力が最も濃く表れる一方で、難易度も上がる。急登、岩場、段差の大きい箇所が続き、手を使って登る場面もある。鎖やロープが設置された場所もあるため、焦らず一歩ずつ進みたい。登山に適したグリップのよい靴が望ましい。
富士見平小屋から1時間45分で瑞牆山山頂に到着する。山頂は岩場の上にあり、周囲の展望は抜群だ。目の前には大ヤスリ岩がそびえ、周囲には奥秩父の山々、南アルプス、八ヶ岳方面の展望が広がる。
スケールの大きな岩峰の景色こそが、多くの登山者を引きつける理由だろう。ただし山頂は、展望が開けている分、風雨の影響を受けやすい。登頂時、雷雲や強風が発生する恐れがある場合は、体を冷やさないようウィンドシェルなどを羽織り、早々に下山に取り掛かろう。
●大展望の山頂からは慎重に下山
下山は来た道を戻る。山頂から富士見平小屋までは、登りで通過した岩場や急坂を慎重に下る必要がある。瑞牆山は、登りよりも下りで注意が必要な山だ。岩の段差が大きく、足を置く場所を考えながら下る場面が多い。濡れた岩や砂の浮いた斜面では滑りやすいため、ストックを使う場合も岩場では無理に頼りすぎず、手も使いながら安定した姿勢で進みたい。
緊張感のある岩場下りを終え、富士見平小屋まで戻れば、緊張感の強い岩場は一段落。小屋で休憩を取り、飲み物や軽食を楽しむのもよい。登山の余韻を感じながらひと息つける、ありがたい存在である。
富士見平小屋から瑞牆山荘までは、再び樹林帯の道を下る。登りでは期待感を抱きながら歩いた道も、下山時には森の静けさが心地よく感じられる。瑞牆山荘バス停へ戻れば、約5時間前後の往復登山は終了だ。
距離だけを見るとコンパクトなコースだが、累積標高差や岩場の多さを考えると、歩きごたえは十分にある。瑞牆山は、初級者が次の一歩として挑戦する百名山としても、中級者が岩峰の景観を楽しむ日帰り登山としても満足度の高い山である。
●下山後は、増富温泉郷で汗を流す
瑞牆山登山のあとに立ち寄りたいのが、登山口から車でアクセスしやすい増富温泉郷(ますとみおんせんきょう)である。瑞牆山や金峰山の山麓に位置する温泉地で、ラジウムを含む湯で知られ古くから湯治場として親しまれてきた歴史を持つ。
増富温泉郷は、静かな温泉地のため、山あいの落ち着いた雰囲気の中で、登山後の疲れをゆっくり癒やせるのが魅力である。瑞牆山は岩場や急登が多く、下山後は想像以上に脚へ疲労が残る山だ。登山後に温泉へ立ち寄れば、岩峰歩きの緊張感から解放され、山旅の余韻をゆっくり味わうことができることだろう。
なお、帰路の時間や日帰り入浴の受付時間が合わない場合は、須玉(すたま)IC方面へ下る途中で、北杜市(ほくとし)周辺の日帰り温泉を候補に入れるのもよい。登山計画とあわせて、下山後の立ち寄り先まで確認しておけば、瑞牆山の一日をより満足度の高い山旅として締めくくることができる。