群馬県みなかみ町と新潟県の県境に位置する「谷川岳」は、日本百名山にも選ばれている人気の高山である。2つの山頂を持つ双耳峰で、標高はトマノ耳(みみ)が1,963m、オキノ耳(みみ)が1,977m。険しい岩峰やダイナミックな地形で知られる一方、ロープウェイを利用することで比較的アクセスしやすく、多くの登山者が訪れる山でもある。
なかでも夏の谷川岳は、残雪と新緑が共存する独特の景観が魅力だ。標高の高い谷筋には7月上旬頃まで雪渓が残る年もあり、真夏が近づく時期でも涼しさを感じながら歩くことができる。
今回紹介するのは、谷川岳ヨッホの天神平(てんじんだいら)駅からスタートする王道ルート。ロープウェイを利用することで標高を一気に稼ぐことができ、日帰りでも本格的な稜線歩きを楽しめる人気コースである。
山頂からは谷川連峰の山々が連なり、天候が良ければ遠方の日光連山や赤城山などが楽しめる展望が広がる。初夏の爽やかな空気と、冬季の名残を感じる雪景色を同時に味わえるのが、この時期の谷川岳ならではの魅力だ。
●谷川岳ヨッホ利用で山頂へ
今回の登山は「谷川岳ヨッホ」を利用してアクセスした。谷川岳ヨッホは、旧「谷川岳ロープウェイ」の名称変更後の施設名であり、現在はこちらが正式名称となっている。
マイカーの場合は関越自動車道「水上IC」から約25分。谷川岳ヨッホ ベースプラザには大規模駐車場が整備されており、日帰り登山でも利用しやすい。
公共交通機関の場合は、JR上越線「土合(どあい)駅」または「水上(みなかみ)駅」から路線バスを利用可能。特に土合駅からはアクセスしやすく、電車利用の登山者にも人気が高い。
ロープウェイで土合口駅から天神平駅まで上がると、すでに標高が1,300mを超えている。麓とは空気感が大きく異なり、初夏でもひんやりとした風を感じられる。
■夏でも雪渓が残る! 夏の谷川岳・絶景稜線歩き
●天神平からスタート! 高山植物が彩る爽快な登山道
登山道へ進むと、木道や石畳が整備された歩きやすい道が続き、周囲には高山植物が次々と現れる。ピンク色が鮮やかなハクサンコザクラ、繊細な花を咲かせるカラマツソウなど、足元を彩る花々に思わず足が止まる。
さらに樹林帯の途中には「天狗の留まり場」と呼ばれるスポットもあり、かつて修行者の休憩場所であったと言われている、また、付近には「ザンゲ岩」といった信仰的な名称も残っており、谷川岳の伝説や山岳信仰の雰囲気を感じられる。標高を上げるにつれて背後の景色も広がり、ロープウェイ駅や天神平の草原が小さく見えてくる。歩くほどに稜線が近づき、期待感が高まっていくコースである。
●夏でも残る巨大雪渓! 谷川岳ならではの夏景色
熊穴沢(くまあなさわ)避難小屋を過ぎると、景色は一気に開放的になる。森林限界を越えた先には、荒々しい岩肌と広い斜面、そして夏でも残る巨大な雪渓が広がっていた。
特に7月上旬頃までは大きな雪渓が残る年もあり、緑の稜線と真っ白な雪のコントラストは圧巻。青空の下で見る雪渓は、まるで北アルプスのような雰囲気を感じさせる。
雪解け水が流れる音や、ひんやりした空気も心地よく、夏とは思えない爽快感がある。登山道脇では残雪の近くに咲く高山植物も見られ、谷川岳特有の自然環境を実感できる。
アクセスの良い山でありながら、ここまで迫力ある残雪風景を見られるのは大きな魅力だ。写真映えする景色も多く、何度も立ち止まりながら進みたくなる区間である。