「絶景は見たいが、長時間は歩けない」というファミリー層に最適なのが、兵庫県猪名川町の大野山(おおやさん)だ。

 標高は753m、六甲山を除けば阪神地域の最高峰で、山頂は天候がよければ四国まで見渡せるパノラマ風景が広がる。一帯は「大野山アルプスランド」として整備されており、平地より涼やかな風が吹く「避暑地」として有名だ。

 最大の魅力は、山頂直下まで車で一気にアプローチできる点。駐車場までの山腹の道は一方通行なので、道幅は狭いが対向車の心配なく進める。山頂までの全行程のうち9割を車で上れるため、気軽に標高700mを超える展望を楽しめる。

 今回は大野山を下りながら巨岩をめぐる「岩めぐり」コース(往復約1.5時間)を紹介する。

■ 巨岩を巡るハイキング。風が心地よい「岩めぐり」ルート

 「岩めぐり」コース入り口に辿り着くためには2通りの方法がある。いずれも同じ入り口に到達するので好みで選ぼう。

車道ルート: 駐車場から車道を約300m(カーブ5〜6つ分)進んだ先。傾斜が少ない舗装道
天文台ルート: 天文台先から山道を約200m進み、上記車道に合流する。景色のよい山道

消えかかった看板「遊歩道」が見えたらあと少し。道路右手に「岩めぐり」コース入り口がある

 入り口から山道へ入ると、そこには約8000万年前の白亜紀、火山活動によって誕生した溶結凝灰岩(ようけつぎょうかいがん)のゴロゴロした岩と真っ黒な土が続く。

 周囲の穏やかな山並みを眺めると、この付近が火山だったとは信じ難いが、独特な景観に覆われた中を歩いていると「この辺りに確かに火山があったんだ」と思わざるを得ない。

 本コースの魅力はいわば飽きないこと。「次の岩を見に行こう」という、先へ進む意欲が高まる「目的」があることだ。歩き始めるとすぐ、1つ目の岩「腰掛岩」が見つかり、程なくして「花立岩」が姿を現す。この「次に、次に」と岩が現れるおかげで、今回一緒に歩いた子どもでも最後まで飽きずに歩くことができた。

看板がない岩もたくさんあるので見逃し注意。「界九」と書かれた岩

 一部の岩には、江戸時代に摂津国(現・兵庫県/大阪府)と丹波国(現・京都府/兵庫県)の国境を示す「界」の文字と数字が刻まれている。自然の造形と、人が刻んだ国境の岩に時の流れを感じる。

 岩めぐりコースには、つい滞在が長引いてしまう有名な岩が2つある。「カメレオン岩」と「鯉の滝登り岩」だ。どうすればその形に見えるのか、ベストな角度を探すのが楽しい時間だ。「あ、ちょっと見える」「やっぱり見えへん!」を、繰り返す息子を眺めながら、ほのぼのとしたひと時を過ごした。

 道中には、かつて神が舞い踊ったという言い伝えのある平坦な大岩「神楽座(かぐらざ)」もあり、休憩にもちょうどよい。

 注意したいのは「うるし岩」と名付けられた岩だ。周囲にはツタウルシなどが自生しているため、不用意に植物に触れないこと。また、コース後半のハイライトは、せり出した岩盤が印象的な「太鼓岩」だ。ストンと切り取られたような崖状の岩はスリル満点だが、足元には十分に注意したい。

 「ふくろう岩」を過ぎ、2〜3分歩くと車道に合流する。「岩めぐり」の看板まで行ったら折り返して駐車場まで登る。岩めぐりを終え、休憩した後は山頂を目指そう。

■最短10分で別世界!「阪神最高峰」の360度パノラマ展望

神戸方面の展望。平らに見える部分が海

 駐車場からは、わずか10分ほどで「阪神地域最高峰」の名に恥じない360度の大パノラマが広がる山頂に到達だ。傾斜はあるが、危険な足場はない。距離も短いため、自分のペースで登れる。目の前に広がる美しい山並みと清々しい空気を、手軽に体感できるのが大野山の魅力だ。