■秋の午後、ゆるやかな潮風に誘われてハゼ釣りへ

お気に入りのグラスロッドとヴィンテージリールで楽しんだ

 渓流シーズンが終わり、山の水が冷たくなり始める頃。筆者は毎年のように、海辺へと足を向ける。狙うのは、幼い頃に親しんだハゼだ。

 今年は複雑な仕掛けを封印し、できるだけシンプルに釣りたいと思った。手に取ったのは、DAISO(以下、ダイソー)の釣り具コーナーで見つけた「スプーン2.2g」の小さな金属ルアーだ。両面マット塗装の落ち着いた色合いが、秋の午後の日差しにしっくりと馴染んでいる。

 「今日はのんびり楽しもう。釣れなくてもいいくらいで」 同行した友人が笑う。

波風の強い河口を避けて運河へと向かった

 2人で肩を並べ、風が強い大河川の河口を避けて静かな運河へと向かった。

長閑(のどか)という言葉がぴったりの光景

■ダイソー「スプーン」×「岩イソメ」= 最強の即席仕掛け

フックを小さいものに交換して使用した

 購入したスプーンにセットされていたフックは#4くらいで、マハゼの口には少し大きく感じたので、カルティバのスプーン専用フック「S-31」#6に交換し、そこに岩イソメを小さく付ける、いわば “ルアー+エサ” の折衷釣法を試みた。

 「エサ釣りでもルアー釣りでもない。こういうラフな感じがいいよね」

 友人が笑いながらキャストした。スプーンが水面を切り、小さな波紋を立てて沈む。その向こうに秋の陽が揺れていた。

■“チョンチョン……ステイ”で誘う、静かな一瞬

最初に顔を出したのは小さなヒイラギだった

 実は、スプーンのフックにエサを付けただけで釣れるかが不安で、フックの根本にあるスプリットリングにハリス付きの袖バリも付けていた。

 しかし、その袖バリは不要なことがすぐに分かった。なぜなら、釣れたほとんどの魚がハリス付きの袖バリではなく、スプーンのフックにヒットしてきたからだ。

 数匹釣った後、2人とも袖バリを外し、スプーンのフックにエサを付けた仕掛けで釣りをするようになった。

小さいけれどうれしい1匹

 底をズルズルと引いたり。しばらく放置してみたり。さまざまな誘い方を試してみたが、一番反応が良かったのは「チョン、チョン」と竿先をあおって着底後、数秒待つ釣り方だった。

 おそらく、ユラユラと落ちるスプーンの動きに興味を持ったハゼが、底からじっと見上げ、やがて口を使うのだろう。

 「きた……!」

 友人の竿が小さく弧を描く。 水面から現れたのは、透き通るような淡い金色の体を光らせるマハゼ。

 「見てよ、きれいだよね」その言葉に、筆者も自然と笑顔になった。気づけばマハゼの釣果は10匹を超えていた。