日本には多くの漢字が存在するが、日本人でも読むことが難しい漢字も少なくない。その中でも今回は「山」のつく難読な漢字に焦点を当てて紹介する。

■「嶝」一文字で〇〇〇〇

高低差のある一本道

 まず紹介するのは「嶝」。「山へんに登る」と書く。音読みは想像しやすいのではないだろうか。

 そう、想像通り「トウ」だ。

 では訓読みではなんと読むのだろう。「やまのぼり?」「とざん?」それとも……?

 正解は……

 「さかみち」!!

 言われてみると確かに山を登るとなると必ずさかみちはあるが、なかなか一発で読める人は少ないだろう。「さか」とも読み、漢検1級に出てくる漢字だ。

 また、名字としても用いられており、読みは「嶝(さこ)」さん。和歌山県や神奈川県などにみられる。

■誰もが知るあの歌に出てくる

島根県・出雲大社境内に奉納されているさざれ石

 2つ目は「巌」。これは読める方も多いかもしれない。この漢字は誰もが子どもの頃から歌ったり聞いたりしたことがあるであろう、あの歌に出てくる。「さざれ石の巌となりて」。そう、日本の国歌だ。

 正解は……

 「いわお」!!

 もったいぶる必要もなかったかもしれない。

 では「さざれ石の巌となりて」の意味はご存知だろうか。さざれ石は細かく小さな石という意味があり、漢字で書くと「細石」。

 国歌の歌詞には「さざれ石の巌(いわお)となりて」とあるが、これは「さざれ石のような細かく小さな石が大きな岩になる」ということを表現している。

 巌は訓読みでは「いわ」「いわお」、音読みでは「ガン」と読み、岩と同様に大きくてごつごつした石の意味だが、ほかにも「けわしい」「けわしいところ」「切り立ったところ」「がけ」などの意味がある。漢検では準一級の漢字だ。まさに山に厳しいと書く字の通り。登山中に突如出くわす切り立った大きな岩などは、この字にぴったりと当てはまるイメージではないだろうか。

■砂でできた半島!?  その付け根の地名は……?

砂でできている野付半島。波や風の流れを感じる。(画像提供:別海町)

 最後は「尾岱沼」。これは北海道の道東にある日本最大の砂嘴(さし)である野付半島(のつけはんとう)に臨む地区の名称だ。または野付湾を指すこともある。砂嘴とは、海流により運ばれた砂が、長年に渡って堆積して作られた地形のこと。そんな野付半島に抱かれるようにして広がる野付湾は、水深2〜5m。比較的浅い湾内の海底にアマモが茂り、野付名物北海シマエビの絶好の棲みかとなっている。

 そして野付半島の付け根部分に位置するのが尾岱沼エリア。

 さて正解は……

 「おだいとう」!!

 「岱」もだが、「沼」も難読だ。

 その由来はアイヌ語の「ota-etu(オタ・エトゥ)」。「砂・岬」を意味する「オタエトゥ」が「おたいと」と訛り、それに尾岱沼と当て字された。アイヌ語で沼を意味する「ト(to)」に沼の字が当てられたようだ。

 目の前には野付湾が広がる尾岱沼。海にはゴマフアザラシやイルカ、ミンククジラなどが生息している。動物は、エゾシカやキタキツネ、ヤチネズミなどが生息していて、特にエゾシカは高確率で見られるようだ。

 冬はあたり一面が氷に覆われ、夏とは全く違う非常に幻想的な景色となる。

 春と秋には、野付湾で行われる「北海シマエビ」漁を見ることができるかもしれない。打瀬舟(うたせぶね)とは、「北海シマエビ」漁に使用されている舟のこと。北海シマエビの棲みかであり、餌となる藻を傷つけないように三角帆に風を受け行われる江戸時代から続く伝統漁法だ。

 また、別海町尾岱沼の中心から約3kmのところには「道の駅 おだいとう」があり、その展望塔からは、野付半島の豊かな自然や国後島を一望することができる。

■あなたはいくつ読めた?

日本の山の象徴・富士山

 漢字の本来の中国語の発音(音読み)とは異なり、漢字が持つ意味を日本語の言葉で表現したものが訓読み。それでも日本人でも読むことが難しいものがあるというと、海外の人は驚くのではないだろうか。「山」のつく難読漢字は簡単な漢字との組み合わせなのに見慣れないものや、画数が多く見るからに難しいものまでさまざまなタイプがあるので、これを機会に調べてみるのも面白い。