10月は空気が澄みわたる季節。夜の深まりとともに星の瞬きが増し、空を見上げる楽しさが募る。秋の夜長、焚き火の温もりに包まれながら流れ星を待つひとときを、筆者は何より愛している。しかも2025年10月は、誰もが手軽に楽しめる天文ショー「オリオン座流星群」が控えているのだ。月の明かりのない絶好の観測条件が整うとされており、自然の中で星を味わい尽くす“特別な夜”を提案したい。
■2025年はオリオン座流星群が熱い!

見ごろは2025年10月21日夜から22日明け方にかけてとなる。月齢0の新月と重なるため、観測条件は揃っている。一方で、ピーク当日だけでなく前後数日(10月19日~23日頃)にも流星は現れる可能性が高い。そのため雲の動きや風向きを事前に調べ、天候の良い夜を選びたい。
オリオン座流星群は、76年周期で太陽を巡るハレー彗星が残した星屑が地球大気で光る現象である。1986年には、最接近が大きな話題となったことを、記憶している人も多いのではないだろうか。
出現数はペルセウス座流星群ほど多くないものの、一つひとつが印象深く、明るい火球が出現しやすいのが特徴だ。緑がかった尾がすっと夜空に描かれ、数秒残る流星もある。見やすいのは10月21日夜〜22日明け方、とくに放射点が高くなる深夜0時から明け方にかけて。放射点はオリオン座の頭部付近にあり、観察はオリオン座方向を中心に据えるのが確実だ。ただし視界は狭めず、仰向けで寝袋に体を預け、オリオン座の周辺を含めた空全体をゆったり眺めると見つけやすい。
●明るく大きな火球が多いオリオン座流星群の魅力
オリオン座流星群の特徴は、火球と呼ばれる明るく大きな流星が多く、緑色に光るものもよく見られることだ。これは大気との摩擦で生じる高熱が、流星の構成成分(ニッケルやマグネシウムなど)を輝かせるためとされている。筆者がこれまで観てきた流星群では、オリオン座流星群は緑色で圧倒的に大きなものが多かった。
●みずがめ座η流星群について【5月上旬】
実は、これから訪れる「オリオン座流星群」と、毎年5月に見られる「みずがめ座η流星群(Eta Aquariids)」は、どちらもハレー彗星が残した塵(ちり)によって生まれる流星群とされている。ハレー彗星が描く大きな輪(軌道)には“往路”と“復路”がある。往路でこぼれた星屑が春(5月)の地球の大気に触れてみずがめ座η(イータ)流星群が、復路でこぼれた星屑に秋(10月)の地球の大気に触れてオリオン座流星群が起こるというわけだ。
つまり、今回私たちが見上げるオリオン座流星群は、39年前(1986年)に地球へ最接近したハレー彗星がまいた星屑の、もう一つの贈り物でもある
■星空と秋の静けさ、自然の中で楽しむ“夜の過ごし方”

流星観察といっても、必要な道具は少ない。満天の星が見える場所に出かけ、温かい飲み物と寝袋を用意して、あとは待つだけである。日中は山や川を楽しみ、夕暮れとともに火を灯し、湯を沸かしてスープやコーヒーを楽しもう。
空が暗くなったら寝転んで星空を眺める。誰かと語らってもいいし、好きな曲を静かに口ずさみながら物思いにふけるのも悪くない。