世界遺産に登録され、一般人が立ち入ることのできない特別保護地区である知床岬や、オホーツク海からの流氷の漂着地としても有名な「知床」。

 今回はそんな手つかずの自然が残る知床の中にあって、年間30万人以上が訪れる知床五湖の魅力を紹介する。

■世界自然遺産登録20周年! 知床国立公園を代表する景勝地「知床五湖」とは?

地上遊歩道から見える知床一湖。どの湖にも看板が設置され、何湖なのかわかりやすい

 日本で3番目に世界遺産登録された、北海道斜里町、羅臼町にまたがる知床は、今年7月に20周年を迎えた。

 国立公園としても2024年に60周年を迎え、外国人観光客も多く訪れる知床は、流氷がもたらす海と陸の豊かな生態系が人々を魅了してやまない。

 その中でも、知床国立公園を代表する景勝地として知られているのが、斜里町にある「知床五湖」。知床連山を背景に、原生林の中にある5つの湖からなる神秘的な湖だ。

 現地には知床五湖フィールドハウスを起点にした、海や山、森や湖を一度に楽しむことができる散策ルートが整備されている。

 ルートには「大ループ」と「小ループ」の2つがあるが、今回は五湖すべてをめぐることができる、全周3kmの大ループを歩いた様子をお届けしていく。

■知床連山とオホーツク海を一望できる知床五湖の魅力

知床三湖に浮かぶ小島。湖によって水中の植物が若干違う

●手つかずの原生林が広がる

地上遊歩道のスタート地点。木々が生い茂る中を歩いていく

 知床五湖散策は木々が生い茂る原生林の中からスタート。

 散策路は土の道や木の板で舗装された道があったが、どこも整備が行き届いていて歩きやすかった。高低差もあまりないため、スニーカーでも問題なく歩くことができそうだ。 筆者が訪れたのは、昨年9月初め。台風後ということもあり、空は快晴、ほぼ風もなく、半袖でいても歩くと日中は汗ばむくらいの陽気だった。

 昼時ということもあり、売店には人がたくさんいたが、散策する人は筆者も入れて7人ほど。散策路にはトイレがないので、事前に行っておくと安心だ。

●地上遊歩道は期間によって利用が異なる 

 多様な生態系が自然のまま残されていることで世界から評価されている知床エリア。周辺環境への配慮や野生動物との共存の観点から3つの利用期に分けられている。植生保護期の春と秋冬の2つの時期は、散策に際してのルールやヒグマについてのレクチャーを知床五湖フィールドハウスで受けたうえで五湖をめぐることができる。一方、ヒグマの活動期である5月10日~7月31日は、知床五湖登録引率者のガイドツアーに参加することが必須だ。

 筆者が訪れたときは植生保護期だったため、10分ほどのレクチャーを受けたあと、同時に散策スタート。ヒグマ対策として、歩く際は手を叩いたり、声を出したりして歩くようにということだったので、皆それぞれ音を出しながら歩いていた。

 注意を払いながらも散策した道は、太陽が一番高い位置にある時間帯だったため、日差しに照らされた林は明るく、輝く緑の先に見える湖の青がより際立って見えた。頭上からはクマゲラの「キョーン」という独特な鳴き声が聞こえた。姿を見ることはできなかったが、クマゲラによっていくつも空けられた、木の幹の四角く縦長い穴は見事だった。

 また、植生保護期でもガイドが案内してくれるツアーが開催されている。参加して理解を深めながら散策するのもおすすめである。

●知床連山とオホーツク海

草地の合間を縫うように設置された高架木道と知床連山。この日は晴天で空の青と山の緑が最高

 散策の終盤は林を抜けるため、一気に視界が開ける。

 進む先には知床半島最高峰の羅臼岳をはじめ、今もなお活動する硫黄山や三ツ峰、サシルイ岳、オッカバケ岳、南岳、知円別岳などが連なる知床連山。後ろを振り返れば、緑の草地の先にオホーツク海が広がり最高の景色が広がっていた。

 知床五湖フィールドハウスから、草地の合間を縫うように設置された高架木道だけ歩くことも可能だ。

知床連山の反対側には緑の草地と木々、その奥には真っ青なオホーツク海が広がる

※知床五湖ガイドウォーク:https://www.shinra.or.jp/shiretoko_goko_guide_walk.html 
※知床五湖公式サイト:https://www.goko.go.jp/index.html