「アジ」と聞くと、多くの人は食卓に並ぶ庶民的な魚を想像するだろう。実際、筆者も同じように考えていた。しかし、東京湾にはその常識を覆す“金色に輝くアジ”が存在するのをご存知だろうか? その名も「金アジ」もしくは「黄金アジ」と呼ばれるもの。そんな知られざるブランド魚に出会うべく、新釣法「ショットガンアジング」で挑んだ結果、想像を超える体験が待っていた。

■回遊型と定着型、見た目も味もまったく違うアジの世界

釣れたばかりの「金アジ」は艶やかな金色をしている

 東京湾で釣れるアジの多くは「マアジ」に分類されるが、実は生態によって「回遊型」と「定着型(居付き)」の2種類に分けられる。

 回遊型は外洋から湾内へエサを求めて一時的に回遊するタイプで、スリムな体型と黒みを帯びた体色が特徴だ。

 一方、今回レポートするのは、定着型のマアジ。通称「金アジ」である。釣り上げた際に驚かされたのはその美しさ。背から腹にかけて金色の光沢を放ち、一般的なアジとはまるで別の魚のようだった。さらに体型もふっくらと太く、どこか“メタボリック”な印象すらある。見た目からして脂ののりが感じられた。

 金アジは、東京湾内の岩礁帯や人工堤防の周辺にとどまり、豊富なプランクトンを安定して食べ続け成長する。そのため体にはしっかりと脂を蓄え、丸々とした体型へと育つのが特徴だ。

 視覚的なインパクトだけでも十分だったが、さらなる衝撃は味にあった。釣った金アジを刺身で食べた瞬間、脂の甘みと深い旨味が口いっぱいに広がり、これまでのアジのイメージが一変した。同じマアジでも、生息環境や食性によってこれほどまでに味が変わるのかと驚かされる。

■アジフライで実感する“金”の実力

サクサクに揚がった金アジで乾杯! たまらないひととき

 筆者が特に魅了されたのがアジフライである。サクッとした衣の中から、ふわふわで脂の甘みがあふれ出し「本当にアジなのか?」と思わず声が出た。

 知人の子どもに金アジのアジフライをふるまったところ、ふだん魚を苦手としているにもかかわらず「これなら食べられる!」と完食し、おかわりまで求めたほどだった。魚嫌いの人さえ虜にしてしまう味が、東京湾の金アジなのである。庶民的な魚というイメージに収まらない、まさに真のグルメ魚である。