■山の守り神、ライチョウとの出会い

一時は中央アルプスでは絶滅したと言われたライチョウ

 登山道を進む途中、岩陰に小さな灰色の鳥が現れた。よく見ると、それは国の特別天然記念物であるライチョウの親子。雛を連れてハイマツの茂みの中を歩き回る姿は、人を恐れる様子がなく、まるでこの高山の風景の一部のように溶け込んでいた。

 ハイマツの茂みを素早く歩くライチョウを写真で撮るには、シャッタースピードが速いカメラでないと難しい。だがライチョウはときどき周囲を見渡すように小高い岩の上に登る。しばらくじっとしていることが多いので、この時がチャンスだ。じっとしている時ならスマホやコンパクトデジカメでも綺麗に撮影できる。その瞬間を狙ってズームインしてアップで撮るも良いし、背景に壮大な山々を入れるのも臨場感が出る。お気に入りの構図を探してトライしてみてほしい。

 木曽駒ヶ岳の登山道、特に今回のロープウェイ駅から山頂へ至るルートはほかの日本アルプスの山々に比べてライチョウの目撃情報が多いことでも知られている。登山中注意して探せば、遭遇する確率は高い。

 ライチョウと出会うためには人が多くなる昼ごろを避けて、静かな朝に訪れるのがおすすめだ。秋になると白い冬羽と茶色い夏羽がまだらになるので、景色に溶け込みやすく、見つけるのが難しくなる。

 動く影を見逃さないようにハイマツ地帯に目を凝らしてみよう。ほかにも人だかりができていたり、ハイマツにカメラを向けている人がいたら、ライチョウを見つけたサインとなるので見逃さないように。

 ライチョウは環境の変化に弱く、人間の過度な接近や大きな音はストレスとなる。立ち入り禁止区域には絶対に入らず、一定の距離を保ちながら撮影することが保護にもつながるので、ルールを守ったうえで観察してほしい。

■山頂で味わう雲上のパノラマと達成感

山頂からの眺め。達成感や満足感があふれる

 千畳敷駅から山頂までは、おおよそ2時間。急登と緩やかな稜線歩きを繰り返しながら進むと、標高2,956mの木曽駒ヶ岳山頂に到着する。

 眼下に中央アルプスの峰々を見下ろし、見上げれば何もさえぎるもののない空が広がっている。澄んだ空気の中での深呼吸は格別で、山頂に辿り着いた達成感は言葉にしがたい。

 木曽駒ヶ岳は夏でも涼しく登れる山であり、ロープウェイで標高を稼いでから山頂を目指せる。色とりどりの高山植物の花々、そしてライチョウとの出会いは、この山ならではの特別な魅力だ。

 アクセス面では、夏や秋のハイシーズンは特に混雑しやすい。早朝に出発することができれば、人混みを避けられるだろう。装備は、防寒着・日焼け止め・十分な水分が必須。山の天気は急変しやすいため、雨具も忘れずに持参したい。

 計画的な行動と自然への配慮を心がければ、夏は涼風、秋は錦色の紅葉に包まれる木曽駒ヶ岳の魅力を存分に堪能できるだろう。

 

【千畳敷駅から木曽駒ヶ岳登山コース】所要時間
千畳敷駅(0:00) → 中岳 (1:10) → 木曽駒ヶ岳(1:40)→ 中岳(2:05)→ 千畳敷駅(3:05)
歩行距離:約3.5km
累積標高差:登り 438m、下り 438m
合計所要時間:3時間05分

●【MAP】木曽駒ヶ岳

●【MAP】千畳敷駅