■パワフルなニジマスたちに翻弄されっぱなし

釣れるのは30cmくらいのサイズがアベレージ

 その後も尺を超えるニジマスたちが頻繁にフライを咥えてくれます。しかし相手は厳しい山岳渓流育ち、易々とは釣らせてくれません。硬い口でフッキングも悪く、さらに激しいヘッドシェイクでバラす回数の方がずっと多いです。潜航した後にジャンプして抗う様子はまさにニジマスのダイナミックさ! スリリングなやり取りに翻弄されっぱなしで、なかなか先へ進めません。

 魚の密度も非常に高く、20cm以下の小さなニジマスたちもついばむように次から次へとフライ目指してやってきます。まず間違いなく自然繁殖しているのでしょう。

 ポイントに応じてドライとウェット、ニンフなどにフライを結びかえて探っていきますが、深みはもちろん、浅いチャラ瀬からも大きな影が浮上してきます。

小型のニジマスは好奇心旺盛! 次々とフライに襲いかかってきます

 きっと釣り人のプレッシャーもないのでしょう。のんびりと大口を開けてフライを咥えてくれます。良さそうなポイントには、30〜40cmの魚が1/2くらいの確率で入っています。しかもバラしても、同じポイントで何度も飛び出してくれます。近年稀にみる魚影の濃さと型の良さ、素直な魚たち、そしてニジマス。いよいよ現実なのか怪しいくらいで、渓の雰囲気と相まって少々怖くなってきます。

■険悪な渓、深入りする前に退渓へ

水は少ないものの流れが速く、ここは天然の丸太橋のおかげで通過できました

 遡行に時間が掛かっているのは、いい釣りができているからだけではありません。難所が立て続けに登場するので、上流へ進むのも一筋縄ではいきません。どんどん険悪になっていく地形に気も張り詰めたままです。河原がほとんどなく、斜面の上や崖を“へつったり”水に入っているしかないので、いるだけで疲れさせられます。

 渓相は明らかにイワナの渓です。ニジマスが好む流心脇以外に、イワナの出そうなポイントも重点的に探っていきますが、一向に姿を見せてくれません。完全にニジマスの渓となっているのでしょうか。

滝を高巻きして下ってくると、アサギマダラがいました。羽に何か書かれています

 空が暗くなってきました。ひと雨来そうです。先が気になりますが、ロッドを畳んだ方がよさそう。さほど深入りしていなかったのが幸いして、あれほど苦労した難所も訳なく(下りなのでロープを使用できるのもあります)、あっという間に入渓点まで戻ってきました。