◼️安心したのも束の間、いきなりとんでもない急登が始まった

山小屋が立つ登山道につながる林道は、一般車両通行禁止となっており、専用のシャトルバスを使わないとアクセスできない。当然、バスの時間は決まっており、夜中に歩き始めることや逆に夜中に下山することはできない。そのため、日帰りで幌尻岳に挑戦する人のほとんどはチロロ林道を選ぶ。
私もチロロ林道を使って、4人で幌尻岳を目指した。ヒグマに遭遇する可能性を常に意識しつつ、かなりの体力と覚悟をあわせ持っていなければならないため、普段はひとりで歩くことの多い私も今回は仲間と歩くことにした。同じく登山YouTuber のりょーじ氏、彼の仲良しの山ちゃん、さらに登山口の駐車場で出会ったみきえちゃんが私のチームメンバー。
標準コースタイムは16時間ほどのため、日の出前にはもう出発しなければならない。薄暗いなか、しばらく川沿いを歩いていくと、早速、渡渉が始まる。うれしいことに、この1週間は雨がほぼなく、水量が少なかった。雨量が多いと命の危険すら感じるほどの渡渉になるらしいけれど、この日は子どもの遊びのようだった。

懸念していた渡渉をクリアし、安心したのも束の間、いきなりとんでもない急登が始まった。標高のほとんどを、ここで一気に稼ぐほど。地面がぬかるんでいて登りづらく、とにかく序盤は苦戦した。
しかし、最初のピークであるヌカビラ岳に登頂すると、目を疑うほどの景色が待っていた。一気に視界が広がり、幌尻岳の立派で美しい本峰が、ここで初めて姿を現す。北海道は大雪山系を除き、高山と呼べるような標高の山はないが、遠くに見えた幌尻岳の姿は高山そのものだった。どーんと大きく、上部はハイマツと岩稜のみで構成されている。私の下手な日本語で表現しようとすると、その美しさは失われるので、言葉は控えめにしておく。とにかく北海道で見た絶景のなかでも、ヌカビラ岳から見上げた幌尻岳には、特に感銘を受けた。