日本には多くの四字熟語が存在する。今回はその中から「山」の漢字が入った四字熟語を3つ、サラリと使えるように紹介していく。最後には番外編もあるのでお楽しみに。

■山が紫? 「山紫水明」

夕映えの山は橙色(だいだいいろ)と表現されることが多いが、紫色になる一瞬も

 「山紫水明」は「さんしすいめい」と読む。意味は「日差しのなかで山が紫色に映え、水が清く明るく見える様子」のことで、美しい山水(自然)の眺めを形容するときに用いられる四字熟語だ。サラリと使うなら「山が映えて、水面がキラキラして最高の眺め。まさに山紫水明だね」といったところだろうか。

 しかしよく考えてみると、山というのは緑色で、夕映えの山は橙色と表現されることが多い。紫は、高貴さや神秘を象徴する色でもある。自然の景色に「紫色」を絡めて表現していることで、目に映る以上の深い美しさを感じずにはいられない。

 この四字熟語をつくったのは、歴史書「日本外史」を記し、漢詩人・文人としても知られる「頼山陽(らいさんよう)」ともいわれている。京都鴨川の西に構えた書斎から夕暮れに見る東山の景色に「山紫水明」と名づけ、書斎を「山紫水明処」という号にした。そこからの景色はさぞ美しかったことだろう。 

 また、鹿児島県の有名な焼酎にも「山紫水明」と名づけられたものがある。山紫水明の地でつくられたことが想像でき、清らかなイメージが伝わってくるようだ。

■高くて長いもの……!? 「山高水長」

どっしり構える山と、流れ続ける川が意味するものは……?

 「山高水長」は「さんこうすいちょう」。「山高」は山がどっしりと高くそびえる様子から、功績の高さを人に仰がれることのたとえで、「水長」は川の水が絶えることなく流れる意味から、長く尽きることのないたとえだ。語り継がれるような功績を残した人や、人の高潔さをたたえるときには「すごいですね」の後に「まさに山高水長ですね」とサラリとつけ加えてみてはいかがだろうか。

 「山が高い」と「水が長い」という2つの自然の様をそのまま組み合わせている点もおもしろい。山は高くて大きいことから、変わらないものの代名詞のように使われることがあり、川は変わりゆくものとして使われることもある。「変化と共にある不変」のような意味合いも感じずにはいられない。