■滝の音と、春の花咲く登山道で棒ノ折山山頂を目指す

満開の桜がハイカーを出迎えてくれる、白谷沢登山口

●白谷沢登山口から特徴的な岩「岩茸石」へ

 さわらびの湯バス停を降り、白谷沢登山口に向かう道のり。エメラルドグリーンに輝く美しい名栗湖が出迎えてくれる。また春は立派な桜も咲き誇っていることだろう。まさにベストシーズン到来だ。

 白谷沢登山道から入山するこのコースは「水源のみち」と名が付けられている通り、沢沿いを歩くことができるのが特徴だ。そのおかげで、1,000mに満たない低山だが、夏場も涼しく快適に登ることができる。登山道は序盤はなだらか。穏やかな流れの沢を横目に、ときおり音を立てて流れ落ちる滝が現れたりして、目を楽しませてくれる。

 樹林帯へと入ってからも、変わらず手入れの行き届いた道が続き、標識も豊富なので安心だ。ときおり見える名栗湖や、周囲の山々の景色を楽しみながら歩ける。ただし、徐々に岩場やハシゴ、鎖場が現れる。沢のしぶきや朝露で滑りやすい場所もあるため、慎重に進もう。

 途中で白谷沢の渡渉ポイントがいくつかあるが、登山道の岩場と同様に、濡れた岩には注意してほしい。特に雨の後は増水の危険があるので、登山前日の天気にも注意を払う必要がある。

 沢沿いを抜けると、徐々に勾配が増し、やがて岩茸石(いわたけいし)に到着だ。

登山道のすぐ横を流れる沢。あちこち苔で滑りやすいので、気を付けて進もう

●権次入峠を経由して、棒ノ折山山頂!

 岩茸石と呼ばれる大きな岩。なだらかな登山道に突如として現れるので、見落とす心配はないだろう。この地点は同じ山域の人気山「高水三山(たかみずさんざん)」にも通じる分岐がある。方向指示の看板をよく見て、「ゴンジリ峠・棒ノ嶺」方面へ進もう。岩茸石から山頂まではおよそ1km、40分の道のりだ。

 岩茸石から先は、再び樹林帯を進む。ちょうど中間地点に位置する権次入峠(ごんじりとうげ)を経由しながら、徐々に高度を上げていく。道幅は狭い箇所もあるが、比較的歩きやすい登山道が続く。

 いよいよ山頂が近づくと、最後に急登の連続がハイカーを待ち構えている。息を切らせながらの最後のひと踏ん張りが求められる。これを登り切った先には広々として開放的な山頂が待っているので頑張ろう。苦労してたどり着いた山頂からの展望は素晴らしく、奥武蔵や奥多摩の山々を一望できる。晴れた日には富士山も望めるそうだ。山頂はベンチも豊富なのでゆっくりと休憩しよう。

なだらかな登山道に大きな岩が出現。これが岩茸石だ

●棒ノ折山山頂から、さわらびの湯バス停へ

 下山は権次入峠の分岐を、白谷沢とは異なるルートを進む。下山ルートは尾根沿いを進むため、視界が開けている箇所もあり、周囲の景色を楽しみながら歩けるのが嬉しい。

 道中は、登りと同様に比較的なだらかで歩きやすいが、一部で滑りやすい箇所もあるため注意が必要だ。また、筆者が訪れた2020年の春には、下山コースに老朽化して立入禁止の展望台が残されていた。そして、依然として現在も朽ちたまま残されているようである。危険なので、近づかないようにしてほしい。

 やがて林道に合流し、舗装路を歩いていると、ここでも立派な桜の木がハイカーを労ってくれる。ゴール地点は「さわらびの湯バス停」だ。登山の疲れを癒やす、温泉好きにとっては、理想的なコースと言える。

広い山頂では、各方角を望め、美しい山並みを見ることができる