●補助バッテリー(電源の確保)

車中泊ではエンジン停止後の電源確保が欠かせない。補助バッテリーを使用すれば、車のバッテリー上がりを回避でき、冷蔵庫への電源供給もできる。補助バッテリーは、ゴムボートの船外機用として使用していた充電と放電を繰り返しできる大容量仕様、ACデルコの「M27MF」を採用。
充電は専用の充電器(AD-2002)を使用することで家庭用コンセントから充電が可能。この補助バッテリーはカヤックフィッシングの魚探用としても使用しており、筆者自身も電機メーカーに勤めていることから抵抗なく導入できた。
筆者愛用の小型冷蔵庫、EENOURの45リットルを考慮して消費電力を計算。冷蔵庫の平均電力は約45W、1日の稼働時間を12時間とした場合(残りの時間は自動車のバッテリーを使用)、1日あたり約540Wを消費する計算になる。補助バッテリーは1260Wの容量を持つため、約2日間の運用が可能となる計算である。


助手席に配置したのはエンジン停止後に素早く補助バッテリーに切り替えるためである。また補助バッテリーとインバーター電源を重ねて置けるように、塩ビパイプで台座を製作。天面には滑り止めマットを敷き安定性を確保。コストを抑えつつ、実用的な台座となった。
●簡易ベッド(寝床の快適性)

SUVの車内はキャンピングカーやミニバンなどに比べると幅が狭く、また天井も低いため、閉塞感を感じやすい。狭い車内で快適な睡眠を得るためには、夏は通気性、冬は保温性に優れた環境作りが欠かせない。
なかでも朝晩が肌寒いシーズンは、厚みがあってクッション性を確保できる冬用寝袋の活用が不可欠。寝袋の下には、キャンプ用のエアマットやクッションマットを併用すると良い。特に冬期の寒い日は地面からの冷気に影響を受けやすいので、マットの活用は体温を逃がさず保温性を高めてくれる効果がある。寝袋はコンパクトに圧縮収納できるものを選びたい。
●テーブル(作業スペースの確保)


SUVに合う市販のテーブルが見つからなかったため、DIYすることにした。車内は限られた空間であり、折りたたみ式のコンパクトにできる構造にした。テーブルは食事や調理だけでなく作業スペースとしても使うため、耐久性があり、安定感が求められる。軽量ながら強度のある素材(木材)を選び、車内のレイアウトに合った設計を考えた。
●調理器具(調理環境)

調理器具は必須アイテムだ。筆者はIwataniのカセットコンロ「カセットフー風まる」を愛用している。ガスコンロ選びのポイントは、コンパクトなサイズ感、風防付き設計、安全機能の3点。まず、持ち運びやすく、十分な火力を持ち、車内の限られたスペースでも邪魔にならない大きさを考えた。 本来、火を使う調理器具は車内では使えない。今回はキャンプで使い慣れているカセットコンロを活用し、十分な換気と安全対策を講じたうえでやむを得ず使用した。
また、カセットコンロは換気した窓から吹き込んでくる風にも火が消えにくく、ガス缶の圧力異変を察知して火が自動消化する安全装置付きのものを選んだ。当然のことだが普通乗用車の車内での火器の使用は推奨されていない。安全対策を徹底的に行い、自己責任で使用してほしい。
このほか車中泊用調理器具としては、火を使わず一酸化炭素中毒のリスクが少ない電磁調理器もおすすめ。また、小型の電気ホットプレートや湯沸かし用の電気ケトルも便利だ。これらを使用する際は、バッテリー容量や電源確保が必要。用途に応じた熱源を選び、安全に調理を楽しもう。
●実際に車中泊してみた! 体験レポート
今回、兵庫県神戸市のオートキャンプ場「しあわせの村」で車中泊を実践した。「しあわせの村」は自然豊かな山間部に位置し、市街地からアクセスも良好。心地よい空間で、キャンプと車中泊が楽しめる人気のスポット。訪れたのが3月中旬ということもあり、外はまだ寒かったが車内は快適だった。夜はキャンプエリアで焚き火を楽しみつつ、食事は鍋料理を楽しんだあと、心地よく寝床についた。車内は快適で、冷蔵庫とスマートフォンの充電にも十分電源を供給できた。2日間、安定した電源供給で冷蔵庫の使用もまったく問題なかった。
春以降は、暑さ対策が必要だ。車内が暑くなりすぎないように、断熱や換気の強化が必要ではないかと考える。また、プライバシー対策も重要。カーテンや遮光シートを工夫する必要がありそうだ。これらの改善点を次回の車中泊で取り入れ、さらなる快適を目指す。
■これから車中泊を始める人へ
今回の記事では、調理器具・インバーター電源・冷蔵庫・バッテリー・簡易ベッド・DIYテーブルのアイテムを活用し、SUVを快適な車中泊仕様にする方法を紹介した。実際に車中泊を体験し、レイアウトの工夫や電源の確保が快適性に大きく影響することを実感した。
車中泊は、必要なアイテムを揃え、少し工夫するだけで驚くほど快適になる。「これなら自分にもできそう!」と思った方は、ぜひ一歩踏み出してほしい。自分好みの空間を作り、自由な旅やアウトドアを存分に楽しもう!