■畝状竪堀群、そして水の手（らしき）曲輪
来た道を引き返し、土橋のある堀切まで戻ってきた。
これを渡って右が主郭エリア、そして登城口方面だが、まだ足を踏み入れていないエリアがある左へ。するとすぐに左手斜面に畝状竪堀群が見えてきた。
キレイに整列した直線的な竪堀が谷底まで延びている。実に素晴らしい。畝状竪堀群はとかく埋もれやすい遺構だが、ここははっきりしているのもいい。石見国では、石見七尾城（島根県益田市）の畝状竪堀群がよく知られるが、それに匹敵する気がする。
竪堀群があるのは、大堀切の先の段曲輪群の下。段曲輪群をU字に迂回するように山道がついていて、その先には単独だが、これも見事な竪堀が落ちていた。
前編の最終盤で寄り道したのとは逆、今度は主郭部の西側をたどって進む。道は山腹を徐々に下り、見上げると主郭部がはるか頭上に。
道はさらにどんどん下ってゆく。おかしいな、地図だと主郭部の脇を回りこんで登城口のある北側へ出るはずなのだけど……。もしかしたらこの道、麓の市村集落からの山道なのかもしれない。あるいは迂回路への分岐を見落としていたのかも。
幸い、主郭部の位置ははっきりわかっている。結局、適当な斜面にあたりをつけて登ると、主郭西下の曲輪に出た。
この曲輪、曲輪の端をグルリとキレイに土塁を巡らせてある。片土塁はいくつか見たけれど、グルリは松山城で唯一ではないか。なぜここだけ堅固なのか。
曲輪脇には巨大な凹みがある。半径は2m以上ありそうで、前編で見た井戸跡の凹みよりも数倍大きい。もしかしたらここが井戸だったのかも。そうなるとこの曲輪は水の手を守るために重要。守りが堅いのもうなずける。
■さらに畝状竪堀群「おかわり」
水の手曲輪の先も、道なき道を北へ。頭上の主郭部稜線を見ながらなので安心。迷うことはない。いざとなったら直登する手もある。
そう思いながら進むと、再び畝状竪堀群。
先ほどの畝状竪堀群に負けず劣らず。同一城内でこれだけの規模のものが二か所も見られるとは思わなかった。眺望も開けているし、竪堀「群」として見られるのも素晴らしい。左手斜面に居並ぶ竪堀を見ながら進むと、あの切岸下に戻ってきた。
松山城、完全攻略。滞在約4時間弱。想定の倍近くを費やしたが、満足度の高い城攻めだった。峠の登城口からなら比高差もなく、道も明確で迷う心配もない。遺構の状態も良好。公園として整備された城に、やや物足りなくなってきた山城好きにはおあつらえ向きの山城だ。
●【MAP】松山城（島根県江津市）
