日常を離れて旅をするならば、特別な場所がいい。どんな体験をするかも大切だが、どんな湯に入るか、何を食べるかも旅の醍醐味だ。ここでは雪国の旅で訪れたい、秘湯・絶景・美食の宿を厳選して紹介。

 TRIP.1では「雪国の奥に佇む 秘湯」として、街を離れて山間にひっそりと佇む秘湯の宿で、雪国にある「日本秘湯を守る会」に所属する温泉をピックアップした。

■山形県【白布温泉・東屋】

●開湯700年余。いまなお豊富に湧き出す奥州随一の秘湯

自慢の滝風呂も源泉100%だ

 1312年に開湯された白布温泉(しらぶおんせん)。天元台高原の麓に位置し、江戸時代から福島高湯、山形蔵王と並んで「奥州三高湯」のひとつに数えられている。明治時代に建てられた東屋(あずまや)には開放感あふれる露天風呂とおよそ400年前から使用されている、石造りの内湯がある。内湯の一角には2.5mほどの高さから湯が流れる滝風呂があり、患部にあてることで整体治療効果を促す。

 宿のそばには天元台高原スキー場があり、近年は良質な雪を求め、外国人観光客もちらほらと見かけるようになっている。

テーブルには米沢牛のしゃぶしゃぶや郷土料理が並ぶ
杉を主体にした山宿風情の内観

住所:山形県米沢市関1537 
泉質:カルシウム-硫酸塩泉

白布温泉・東屋 HP

■秋田県【乳頭温泉郷・鶴の湯】

●これぞ秘湯。4つの源泉が雪深い山中でこんこんと湧き出る

鶴の湯といえば露天風呂。自然を存分に感じられる

 秋田駒ヶ岳の北の麓に位置する乳頭温泉郷は秘湯として名の知れる場所だ。七軒ある宿のひとつである鶴の湯は最も古くからある宿。秋田藩主の湯治場としても利用された歴史を持つ。白湯、黒湯、中の湯、滝の湯の4つの異なる源泉がある。白湯が足元湧出する大きな混浴露天風呂は鶴の湯のシンボルともいえる存在だ。秋田駒ヶ岳への雪山登山やスキーと合わせて利用したい。

夕食は岩魚や芋鍋の料理
夜にはろうそくが灯されてより一層山宿らしい雰囲気に

住所:秋田県仙北市田沢湖田沢字先達沢国有林50 
泉質:含硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物・炭酸水素塩泉、他3種

乳頭温泉郷・鶴の湯 HP

■岐阜県【平瀬温泉・藤助の湯 ふじや】

●飛騨の山懐に抱かれて浴びる霊峰白山の恵み

掛け流しの内湯。広くはないが、3人が悠々と入るのにちょうどいい。静けさ漂うなかゆっくりと入浴できる

 岐阜県・飛騨にある世界遺産、白川郷。そこから20分ほど車で西に移動した場所にあるのが平瀬温泉。藤助の湯ふじやは日本三代霊山の一座、白山の麓に源泉があり、宿から15km離れた場所から引いている。井戸水で間接冷却しているので加水・加温・循環は一切行っていない。風呂は檜が香るこぢんまりとした内湯と岩で囲われた野趣溢れる露天風呂の2つがある。

陶板焼きで提供される飛騨牛は口に入れた瞬間とろける旨さ
部屋には囲炉裏が備わる

住所:岐阜県大野郡白川村平瀬325-1 
泉質:含硫黄-ナトリウム-塩化物泉

平瀬温泉・藤助の湯 ふじや HP

 

【「SNOW TRIP MAGAZINE 2024」より再編集】