2025年の巳年にちなんで、名前に「蛇」のつく山を3つ紹介する。いずれも、登山口はスキー場などの施設があり、冬用タイヤを装着すれば、登山口まで車で行けるところばかりだ。近くには温泉地があり、下山後のリフレッシュも楽しめるうえ、どの山も雪山の経験があればチャレンジしやすい。この冬、登山を始めるなら、「蛇」のつく山からスタートしてみてはいかがだろうか。

■大蛇伝説が残る「蛇峠山」&昼神温泉(長野県阿智村)

蛇峠山の狼煙台跡。見晴らし抜群!

 長野県下伊那郡阿智村(しもいなぐん あちむら)に位置する「蛇峠山(じゃとうげやま・標高1,663m)」は、大蛇がすむ「蛇が池(じゃがいけ)」があったという伝説が残る山だ。

 阿智村に鎮座する7つの山からなる阿智セブンサミットの1つで、「日本百名山」の選定者であり、著者の深田久弥が最後に登った山としても知られる。

 登山口となる「治部坂(じぶざか)高原スキー場」からのルートは、別荘地を抜けて山へと続く。登山道は林道と何度か交差し、無雪期であれば「馬の背」と呼ばれる付近に駐車できるため、さらに短いルートで山頂に到達できる。

 この山は、戦国時代に武田信玄が狼煙台(のろしだい)として使った山で、現在は見晴らしのいいその付近に、レーダ雨量計施設が建っている。特に、馬の背や山頂手前の広場は、北アルプス、中央アルプス、八ヶ岳、南アルプスの大パノラマが広がる絶好の展望ポイントだ。筆者が2025年の正月休みに訪れた際は、雲がかかる中でも雄大な南アルプスが望め、多くの登山者で賑わっていた。

 下山後は、スキー場から車で20分ほどの「昼神温泉」がおすすめ。南信州最大規模の温泉郷で、美肌効果があるとされる美人の湯でリフレッシュできる。

【治部坂高原スキー場から蛇峠山コース】所要時間
治部坂高原スキー場 (0:00) → 馬の背 (1:00) → 蛇峠山 (2:00) → 馬の背 (2:40) → 治部坂高原スキー場 (3:40)
歩行距離:約6.7km
累積標高差:登り 540m、下り 540m
合計所要時間:3時間40分(ただし、積雪状況によって変わる)

●【MAP】蛇峠山

●【MAP】昼神温泉

■“ガトーショコラの浅間山”が望める「蛇骨山」&高峰温泉(長野県小諸市)

「トーミの頭」から望んだ浅間山(2022年12月撮影)

 蛇のつく山の2座目は、浅間山の外輪山に位置する「蛇骨岳(じゃこつだけ・標高2,366m)」。長野県小諸市にあり、冬、うっすらと雪に覆われた“ガトーショコラのような浅間山”を望めることで有名な黒斑山(くろふやま)から、さらに30分ほど歩いた場所にある。視界がよければ、黒斑山よりも間近で浅間山を見られる。蛇骨岳は、山肌に黒い岩が入り混じる様子が蛇の骨のように見えることから、その名がついたといわれる。 

 2025年の初日の出を求めて、登山口である「高峰高原ビジターセンター」に車を駐車して、午前5時に登山を開始。登山口の気温はマイナス10℃を示し、吐く息でメガネが凍るほどの厳しい寒さだった。トーミの頭と黒斑山の間で迎えた初日の出は、濃い霧に包まれながらも、もやの中にうっすらとオレンジ色の朝日が浮かぶ幻想的な光景となった。

 黒斑山から蛇骨岳へのルートには、道の片側が切れ落ちた箇所があるため、明るくなってから進むのが安全だ。この日は残念ながら、霧のためにガトーショコラの浅間山の姿を見ることはできなかった。

  下山後の温泉は、「高峰高原ホテル」の絶景風呂か、秘湯感が漂う「高峰温泉」のランプの湯がおすすめ。高峰温泉へは、冬季の間はマウンテンリゾートスキー場から雪上車での移動となる。スキー場の中を走り抜ける雪上車の旅も温泉の楽しみのひとつだ。

【高峰高原ビジターセンターから蛇骨岳コース】所要時間
高峰高原ビジターセンター (0:00) → 車坂山 (0:15) → 槍ヶ鞘(やりがさや) (1:15) → トーミの頭 (1:25) → 黒斑山(1:50) → 蛇骨岳(2:20) → 黒斑山(2:50) → トーミの頭 (3:10) → 谷コース分岐 (3:15) → 高峰高原ビジターセンター (4:15)
歩行距離:約7.1km
累積標高差:登り 605m、下り 605m
合計所要時間:4時間15分(ただし、積雪状況によって変わる)

●【MAP】蛇骨岳