◼︎荒地を1から切り開く

 場所は決まったものの、未だAとBの問題はクリアできていない。そもそも「川っぺりの放置された杉林は荒れ放題で侵入困難」な状況を解決しないと、土地が平らかどうかすらもわからない状態だ。

 Kさん曰く、かつてその場所は畑だったこともあるとのことで、「雑木や倒木を取り除き、整地すれば一筋の希望が見えるかもしれない」と、ナタ一本を手にして突入していくというハードな開拓作業が始まった。今年5月のことである。

何をどこから手をつけていいかわからないような状態を開拓していく
樹間から見える円原川の美しさだけが励みで頑張った

 気の遠くなるような作業だったが、そこから見える円原川の美しさと、そこを水風呂にした時の気持ちよさに思いを馳せ、ひたすら開拓を進めていった。神崎川サウナ時代の仲間もクワを持って駆けつけてくれた。皆「ここでサウナできたら最高すぎるでしょ!」の想いだけで、惜しみなく汗を流して荒地を切り開いていったのである。

重機を入れられないので抜根も人力で行った。ハードすぎるぜ

 やがて、テントサウナが1基だけ張れる平坦地を作り上げた。もちろん、僕らは即座にテントサウナを持ち込み(それも大変な作業)、記念すべき1回目のサウナ&円原川風呂のテストを敢行したのである。

なんとかこの土地唯一の平坦スペースを作り上げた!

 この時のサウナの気持ち良さは生涯忘れることはないだろう。

 川風呂の水質や水温は神崎川の時よりはるかに素晴らしく、苔むした世界の中で自然と一体になって行う外気浴の心地よさと自然との一体感は、筆舌に尽くしがたいものがあった。

最高すぎて本気で昇天するところだった。開拓の苦労も一気に吹き飛んでいった

 どん底からここまで約2か月。僕は「間違いなかった…… ここは唯一無二の最高の場所になる!」と確信し、改めてこの場所に人生をかける決意を固めた。このたった一回のサウナと川風呂と外気浴で、僕は長いうつ状態から脱却し、むしろ神崎川サウナがダメになってしまったことにも感謝できる人間に生まれ変わっていた。

 やはり、この川には人の心を癒す“無条件的な何か”がある。そして“自分を真ん中に取り戻す”ことができる力がある。きっと、このサウナ村が完成したら、僕のように救われる人がいるはずだ。

 だが、シン・サウナ村完成までは、まだまだまだまだ課題は多い。改めてこの土地での事業計画を徹底的に練り、イメージを作り、資金集めをし、実際に場を作っていかねばならない。河川法や公衆浴場法など、法的にクリアすべき問題もある。ここから僕は再び茨の道を歩んでいくことになるが、その話はまた次回にて。

 ナタ一本持って荒地に突入してから約半年。今、素敵なツリーテラスの上で、バイオリンの少女に拍手が送られている。こんな日が訪れるなんて、開拓の頃は想像もできなかった。さあ、冬が来て雪が降る前に、さらに作業を進めよう!

子どもたちが泥団子で作った雪だるま。まだ雪降らないで〜