クマの冬眠は多くの人が知る事実だが、冬眠前の秋、クマの行動が活発になるのはご存じだろうか。

 紅葉が楽しめる秋はクマの目撃件数、事故件数も増加傾向となる。

 本記事ではクマが冬眠する理由と秋のクマに注意すべき背景を、環境省が公表している資料や参考文献をもとに紹介する。

参考文献:人を襲うクマ―遭遇事例とその生態』(羽根田治著)

■なぜクマは冬眠するのか

食料が少ない季節を乗り越えるためクマは冬眠する

 ヒグマ、ツキノワグマはなぜ冬眠するのか。これはクマの主食となる木の実などが冬場には採れず、冬眠することによって、飢餓に備えるからだと言われている。

 なお、冬眠する前は夏に比べて数十パーセント体重を増加させるそうだ。いわゆる食欲亢進期である。冬眠中は体温を下げ、排泄や排便も行わない。

■11月まで注意? クマと人との事故

残された糞を見ると、木の実を食べていることがわかる

 環境省によると、令和5年度の1月末までのクマ類による全国の人身被害の発生件数は197件であり、月別統計がある平成18年度以降最多のペースだという。

 令和5年度は、9月以降に顕著に増加し、10月の人身被害の発生件数は過去最多、報道で見聞きすることが多かった東北地方では11月にかけても増加したことがわかる。   

 これはなぜか。春や秋に事故発生件数が多くなる理由として、山菜やキノコ採りなど、人間の活動が大きく影響していることが推察されると書かれている。特に山菜は、冬眠明けのクマにとっても垂涎の食物品目であり、人とクマそれぞれが山菜に夢中になっているなかで遭遇し、事故へと発展するなどが考えられるようだ。

 本年度の速報値では昨年ほどの急激な増加は見られないが、かつてのように季節は一様ではない。身近な里山であっても引き続き注意をしたい。