飛騨山脈、通称「北アルプス」と呼ばれる山塊は山深く、最深部ともなると1日では辿り着けない場所も多い。

 今回は、筆者が9月初旬に北アルプスの秘境を訪れた時の様子を紹介したい。標高2,000mを超える場所にある池から望む景色や、天空の滑走路など、山好きなら一度は見てみたいと思う絶景が盛りだくさんだ。

■双六岳(すごろくだけ・標高2,860m)

弓折乗越(ゆみおりのっこし)から双六小屋へと向かう途中から望む双六岳

 双六岳は、長野県大町市と岐阜県高山市にまたがる標高2,860mの山で、「裏銀座」と呼ばれる主稜線に位置し、花の百名山や日本百高山、ぎふ百山に選定されている山だ。

 双六岳は日本で44番目に高い山であるが、その山容は穏やかな高原状の台地になっており、山頂からは晴れている日には360度のパノラマが広がる。

 見事な景色が広がる、北アルプス最深部への入り口、双六岳。初めて訪れたが、すっかり虜になってしまう山行となった。

■起点となるのは「新穂高温泉」 片道7時間30分のロングコース

起点となる「新穂高温泉」。これからの山行を期待させるダイナミックな景色が広がる

 今回、双六岳へと向かう起点となるのが新穂高温泉(しんほたかおんせん)だ。新穂高温泉からは槍ヶ岳(やりがたけ)へと向かう登山道や、西穂高岳(にしほたかだけ)へと向かう新穂高ロープウェイが運行しており、多くの登山者で賑わう。

 新穂高温泉から双六岳までの所要時間は約7時間30分、ロングコースだ。長い登りが続き、体力を要するが、双六岳までの道中は見どころが多いため、楽しみながら歩けるはずだ。

■わさび平小屋、鏡平山荘を越えて、双六岳へ

樹林帯に囲まれたわさび平小屋。最初の休憩ポイント

 新穂高温泉から約1時間20分、わさび平小屋へと到着する。わさび平小屋までは林道が続いているので歩きやすい。わさび平小屋ではおいしい水が補給できるほか、ジュースや軽食も楽しめる。夏場は冷やしたトマトやきゅうり、オレンジなどのフルーツを提供しており、名物になっている。

 双六岳まで先は長い。しっかりエネルギー補給をしてから出発したい。

 わさび平小屋をあとにすると、槍ヶ岳と双六岳へ向かう登山道の分岐点があり、ここからは登山道となる。

鏡平山荘へと向かう登山道。石畳になっていて危険もなく歩きやすいが、長い階段は大きな負荷がかかる

 石畳の登山道は整備され歩きやすいが、階段になっており、勾配も急な区間になる。筆者は双六岳までの道のりで、わさび平小屋から鏡平山荘(かがみだいらさんそう)までが一番キツイと感じた。登りが続き、心肺に負担がかかるので、急がずにペースを落とし一歩一歩進みたい。

 わさび平小屋から1時間35分ほどのところで、秩父沢出合いがある。水場になっていて、冷たい水が補給でき、顔を洗うと気持ちがいい。

秩父沢出合。この辺りまで来ると見晴らしもよくなってくる

 秩父沢出合いから鏡平山荘までは約2時間20分。秩父沢までと同様に石畳の登山道が続くが、標高が上がってくると見晴らしもよくなってくる。振り返ると焼岳(やけだけ)や乗鞍岳(のりくらだけ)の眺望が広がっている。日差しをさえぎるものがないので、紫外線対策を忘れずに。

焼岳や乗鞍岳を眺めながら休憩できるスポット

 登山道が木道になると、鏡平山荘まではもうすぐだ。途中、「あと5分」の案内があったが、疲労が溜まった体であったため、長く感じた。