●鳥居をくぐり、52丁目を目指す
工業集積エリアの舗装路と林道を抜けると、武甲山御嶽神社の一ノ鳥居が現れる。鳥居をくぐり、20台ほどスペースのある駐車場を過ぎたらようやく登山口だ。歩行距離だけ見ると、駅から山頂までの8.5kmのうち6kmを歩いてきたのだから、ゴールは眼の前のように感じるが、登山道はこれからが本番だ。
武甲山は遠くから見るとピラミッドのような特徴的な形をしており、山中も木々が少なく寒々しいかと思いきや、いざ登山道に入ると気持ちのいい樹林帯歩きが楽しめる。その多くはヒノキ林だ。また道中には清流が流れ、水場もある。
しばらく歩いていると、登山道の至るところに「5丁目」「6丁目」と書かれた石の標識があるのに気づくことだろう。これは、山頂を52丁目として、進行具合を知らせてくれるものだ。等間隔ではないのだが、確実に山頂に近づいていることを実感できて、ありがたい存在だ。
木々の中から水温が聞こえてきたら、不動滝が近づいてきた証拠だ。水量は多くはないが、美しい滝を見ることができる。石の標識は18丁目、小休止していこう。
滝の水は山頂トイレ用水として活用されており、荷揚げ用のペットボトルが用意されている。体力に自信のある人は、荷揚げに協力してあげよう。
さらに進み33丁目。道の真ん中にどっしりとそびえる、ひときわ大きな杉の木と出会う。樹齢400〜500年とも言われる大杉で、まさに御神木だ。周辺は「大杉の広場」と呼ばれ休憩スポットになっている。
50丁目。とうとう山頂直下の御嶽神社に到着した。木の生い茂る山中に突如現れる立派な神社には驚きである。細身の狛犬を横目に、神社の裏手に進むと武甲山山頂だ。
●山頂からみる秩父の街並みと周囲の山々
1,304mの頂は、鉄柵がめぐらされた展望台のようで、多くの登山客がその景色に見入っている。眼下には秩父の街並みが広がり、街をぐるりと囲む美しい山々が見渡せる。
間もなく紅葉が見頃を迎え、武甲山にたくさんの登山者が訪れるシーズンだ。山頂からの景色はもちろん、山中の木々の葉が鮮やかな赤や黄色に変わり美しい。
さらにもう一つ、春の芝桜の時期もおすすめだ。秩父エリアが美しく映える春にも足を運んでみてはいかがだろうか。
■まるで秩父のピラミッド「武甲山」登山口
秩父の名峰・武甲山の登山コースを紹介した。
石灰石採掘と、その加工により発展を遂げた秩父。それを支えたのが武甲山だ。ピラミッドのような山容には見る人を惹きつけ、いつかは登ってみたいと思わせる不思議な魅力がある。私も遠くから見た不思議な形の山には、ずいぶん興味を惹かれたものだ。
今回は、工場集積エリアもコースに入れたが、もちろん武甲山登山だけでも十分に楽しめる。マイカーでアクセスすると、より短時間で登ることができる。2024年4月には、登山シーズン中の路上駐車増加を防止するため、新たに約50台分の駐車場が新設された。ぜひ不思議な形の武甲山と、山頂からの絶景を堪能してほしい。