■震災記念碑公園に建立された追悼之碑と「火垂るの墓」の記念碑

 ニテコ池の北西に位置するのが、西宮震災記念碑公園だ。開園は震災から4年後の1999年。阪神淡路大震災の教訓を後世に伝えるとともに、犠牲者の追悼の場とするために整備された。

 入り口を入ってすぐのところに「西宮市犠牲者追悼之碑」が設置されていて、そこには犠牲となった1086名の名が刻まれている。

芝生の中に建つ西宮市犠牲者追悼之碑

 大きな石碑の周囲には震災写真の陶板が並べられている。

 厳粛なたたずまいを見せる追悼之碑を通り過ぎ、低い階段を上った敷地の隅にも記念碑がある。これが作家・野坂昭如の作品「火垂るの墓」の記念碑だ。

火垂るの墓記念碑

 「火垂るの墓」は野坂の実体験に基づいており、神戸大空襲で焼け出されて妹とともに身を寄せた親戚宅は、公園近くの満地谷(まんちだに)地区にあったという。またアニメでは、ニテコ池と防空壕が描かれている。

 「小説火垂るの墓誕生の地」と刻まれた、さくら御影石製の石碑は高さが2.2メートル。右側には、蛍とたわむれる清太と節子が描かれた陶板挿絵と小説の一文、解説文が記された石板が置かれ、左側には野坂昭如の略歴と顔写真の入ったモニュメントが置かれている。

野坂昭如の顔写真入りモニュメント

 さらに公園の奥に行くと立派な慰霊塔があり、これは戦没者の慰霊のために1955年に建立されたものだという。

終戦10年を機に建てられた供養塔

■最高級住宅街の六麓荘町も最寄り

 公園を出て駅に戻る。どうせだから苦楽園や、近くにある芦屋市の六麓荘をたずねてみようかとも考える。

 関西人にはおなじみの六麓荘は、全国随一といっても過言ではない最高級住宅街だ。別の仕事でたずねたことはあるが、まさに「お屋敷街」「豪邸街」の名にふさわしい。ただし、エリア内の撮影は原則禁止。今回訪ねてみても写真撮影は出来ないし、しかも天気の様子も怪しい。

 ここは先を急いで、甲陽園駅へ向かうことにした。

―つづく―