■絶景を求め、再び北岳へ

 3日目の朝、テントから顔を出すと、眼下に広がる雲海の中から、富士山の頂がわずかに姿を見せており、まるで一枚の絵のように趣深かった。この日は、このまま雲が広がるのかと思われたが、予想に反して晴れ間が広がった。

雲海から覗く富士山山頂

 北岳山荘から広河原へは、八本歯のコルを通り二俣へ下りるルートが最短であるが、前日、北岳山頂での天候が芳しくなかったため、再び北岳に登り、北岳肩の小屋を経て右俣ルートを歩いて下山することにした。

 晴れていると北岳山頂からは仙丈ヶ岳や甲斐駒ヶ岳が鮮明に見渡せる。遠くには八ヶ岳や北アルプスまで見え、登り直した甲斐があった。

北岳山頂から見える仙丈ヶ岳と北アルプス
山頂からは甲斐駒ヶ岳や八ヶ岳も望める

 右俣ルートや二俣周辺の紅葉も美しく、彩り豊かな風景に目を奪われた。名残惜しさを感じつつ、北岳を背にして歩き続け下山した。テント装備を背負い北岳を登るのは決して楽ではなかったが、鮮やかな紅葉や迫力ある北岳の景色が疲れを忘れさせてくれたように思う。苦労の末に待っていた絶景は、まさに心を満たすものだった。

二俣周辺もきれいな紅葉を満喫できた

■白根御池小屋や二俣までのトレッキングもおすすめ

 北岳への登山はコースタイムが長く、急勾配が続く所もあるため、登山に慣れていない登山者には難易度が高い。しかし紅葉が目的であれば、山頂まで到達せずとも、白根御池小屋、または二俣辺りまでのトレッキングでも十分に楽しめるだろう。

 登山口から白根御池小屋までは約2時間半、さらに白根御池小屋から二俣までは約30分かかるため、日程に余裕があれば、広河原山荘や白根御池小屋に宿泊し、ゆったりと秋の景色を堪能するのもおすすめだ。

 10月に入ると秋の深まりとともに気温がぐっと下がる。日中は暖かく感じる日もあるが、朝晩は10℃を下回ることが多く、寒暖差が激しくなるため、防寒対策は万全にしておこう。十分な装備を整え、紅葉とともに北岳の魅力を楽しんでほしい。

 

【広河原から北岳】所要時間
1日目:広河原(12:00)→白根御池小屋(15:00)
2日目:白根御池小屋(7:00)→北岳肩の小屋(10:35)→北岳(12:00)→北岳山荘(13:50)
3日目:北岳山荘(7:20)→北岳(8:50)→北岳肩の小屋(10:00)→二俣(11:30)→広河原(13:00)
歩行距離:13.7km
累積標高差:登り1829m、下り1803m
合計所要時間:15時間30分

●【MAP】広河原登山口 駐車場