女性的で優美な山容や、高山植物が豊富なことから「南アルプスの女王」と称される「仙丈ヶ岳(せんじょうがたけ)」。日本百名山の一座として数えられ、3,033mの標高を誇りながら日帰りでも登れる山として登山者に人気だ。今回は2022年11月5日の冠雪したばかりの山々の絶景をレポート形式でお届けする。

■初冠雪の時期は?

 アルプスなど標高3,000m近い高山の初冠雪時期は、平年10月中旬から下旬頃。麓から中腹にかけては紅葉が広がり、登るにつれて冬へと変わり、一度で二つの季節を楽しめる登山ができる。

 もちろん、積雪路を歩くため、チェーンスパイクや軽アイゼンなどの雪道でも歩けるアイテムや、低温を想定した防寒装備を用意して挑む必要がある。

■南アルプス林道バスで「北沢峠」へ

仙流荘のバス営業所では始発のバスが待機していた

 深夜に東京を出発して車で約3時間、長野県伊那市の「仙流荘(せんりゅうそう)駐車場」までやってきた。この先は、環境保護と交通安全の観点から一般車両の通行は禁止されており、南アルプス林道バスを利用して、登山口である「北沢峠」を目指す。

 仙流荘にはバス営業所があり、始発のバスが出ている。10月10日から11月15日の運行終了までは土日祝日は6時5分、平日は8時5分から運行開始だ。

 筆者が訪れたのは土曜日。始発バスの1時間前には営業所でチケットを購入し、すでにできていた10人程の列の後ろに並んでバスを待った。すると、30分後には長蛇の列に変わっており、早く並ぶのが正解だったようだ。

●南アルプス林道バスの運行状況と料金はコチラ

URL:https://www.inacity.jp/kankojoho/sangaku_alps/minamialps/minamialps_jikokuhyo.html

■登山は急登からスタート

南アルプス林道バスの終着点である北沢峠

 バスに揺られること約1時間。北沢峠に到着だ。ここを拠点に仙丈ヶ岳、「甲斐駒ヶ岳(かいこまがたけ)」、早月尾根(はやつきおね)を経由して「鳳凰三山(ほうおうさんざん)」を目指すことができる。今回は仙丈ヶ岳へ。

急登りや岩場が多い薮沢新道
薮沢新道から北岳を望む

 北沢峠から「薮沢新道(やぶさわしんどう)」に入り、尾根を目指す。登り始めから急登となり、途中なだらかな道も出てくるが、再び急な岩場を進む。気温は5℃程で寒かったが、10分もすると息が上がり暑くなった。しばらく無心で登っていくと、木々の隙間から「北岳(きただけ)」が顔を覗かせる場所を発見した。