■強風の中、はじめてのテント設営
9時30分、頂上山荘のテント場に到着。受付を済ませ、3張りのテントが設営できる場所を探す。トイレが近く、なるべく風の影響を受けない場所を探すが、どこもそう変わらない。若干風を避けられるかなと思われる場所を確保し、各自テント設営をはじめた。
強風下では、装備やテントが飛ばされるのを絶対に避けなければならない。そのため、石やザックを使って、テントや装備が飛ばないように工夫するといったコツがいるのだが、筆者のテントが形になったころ、友人のテントはまだ平面のまま。テントのペグを固定するのに手間取っているようだった。
まずは、自分のテントを確実に設営させて、友人の設営を手伝う。彼女自身、自宅や低山で設営練習をしてきたが、強風の中でのテント設営は難易度が一気に上がる。また、彼女のテントは2人用で、筆者たちのテントよりもサイズが大きいため、居住性はよいが強風の中では扱いづらそうだった。
後日「テントが大きくて、自分ひとりでは手に負えなかった。こんなことなら小さいテントを買うべきだった」と少し悔やんでいた。
友人はヘトヘトになりながらも、なんとかテントを設営。一休みした後、アタックザックで木曽駒ヶ岳山頂に向かう。風は強いが、視界は良好。目の前には御嶽山、遠くに北アルプス、南アルプス。テント設営に疲れ、少し翳りを見せていた彼女の顔も、はじめて見る大絶景を目の前に笑顔が戻る。
■深夜、視界不良で自分のテントを見失う
友人が最終的にテントを設営した場所は、筆者たちから30mほど離れていた。最初に選んだ場所は地面が固く、ペグが刺さりづらかったため変更したのだ。
夕方になると、霧が出てきて辺り一面、真っ白になった。深夜1人でトイレに行った友人は、霧でヘッドランプの明かりさえ届かない状況に不安になり、トイレをあきらめ戻ろうとした。しかし、自分のテントがわからず、テント場の中で迷子に。長い間テント場を彷徨っていたそうだ。
何も見えない状況に彼女は途方に暮れ、恥を忍んで目の前のテントの住人を起こし、付き添ってもらおうと決心した瞬間、偶然にも自分のテントが目の前にあることに気づき、なんとか事なきを得たのだった。
翌朝この話を彼女から聞いた筆者は、心底後悔した。広いテント場だからよかったものの、テント場によっては崖が近く危険なところもある。私たちから離れず、近くにテントを設置するように強く伝えていれば、深夜のトイレにも対応できたはずだ。
■天候によって大きく変わる、登山の難易度
風がなく、視界も良好であれば友人もはじめてのテント泊で辛い思いや、苦労をせずに楽しめただろう。筆者自身、何度も訪れたことがある山だっため、気の緩みがあった。初歩的なことを忘れ、友人を危険な目に合わせたことを後悔し、天候によって登山の難易度は大きく変わることをあらためて痛感した山行になった。
筆者はこれまでも何度か、初心者を連れてテント泊登山をしてきたが、土砂降りや撤収時の雨など山の天気は変わりやすい。しかし、その場面では皆必死の形相だが、終わってしまえばよい経験ができたと笑顔になる。
下山後、彼女もさっぱりした笑顔で「またテント泊に行きたい、今度こそ晴れた日に!」と言ってくれて安心した。今回のテント泊で彼女が得たものはとても大きい。山の天気の変わりやすさを知り、悪天候時のテント泊経験は、彼女の次の登山にきっと繋がるはずだ。
<今回の山行で得た教訓>
・強風の中では、2人1組になって1つずつテントを設営する
・グループ登山では、なるべく近くにテントを張る
・視界不良時には、1人で歩かない
所要時間:登り2:00、下り1:50
千畳敷駅→(1:00)→乗越浄土→(0:20)→中岳→(0:15)→頂上山荘テント場→(0:25)→木曽駒ヶ岳
●【MAP】木曽駒ヶ岳
※この記事の情報は2024年8月現在のものです。内容が変更される場合もありますので、最新の情報はリンク先のHPでご確認ください。