アウトドアアクティビティへの関心が高まる夏は、海や川だけでなく、登山に挑戦しようと計画している方もいるはず。そんな方は登山用品の購入やレンタルだけでなく、ぜひ知識も増やしていただきたい。
登山において適切な装備は命を守る重要なものだが、それは知識も同じ。事前に知っていれば、未然にトラブルを予防できるのだ。今回は筆者の実体験でのトラブルを例に、夏山での予防と備えについて紹介したい。
■実体験トラブルその1 真夏の登山で足が痙攣!
登山の基本は早出早着といわれ、早朝から行動することが多い。しかし、昨今の夏の気温は異常で、比較的気温が低い時間帯に行動しても、運動強度の高い登山は常に油断ができない。
筆者に熱中症と思わしき症状が出た時も、涼しい時間帯に行動し、最も気温が高くなると予測される14時には下山する計画だった。
行動している中で最初に感じた異変は頭痛。行動不能に陥るほどではなかったが、大事をとって休憩することにした。幸いなことに日陰があり、休憩していると頭痛は和らいだが今度はふくらはぎが痙攣しはじめた。
痛みはないが動きが鈍く、ピクピクと痙攣する足を見て「動けなくなったらまずい」と怖くなった。撤退を決定してから道中にあった茶屋でスポーツドリンクを購入し、飲んだ後に症状が改善してから「熱中症かも?」という思いが頭をよぎった。
●水分補給だけでは不十分だった熱中症対策
登山の最中に足が攣ってしまった経験はあったが、それは寒い時期のこと。はじめて気温の高い季節に足に異変が起こったため、気になってその原因を調べてみたところ、熱中症の初期症状である手足の痙攣であるとわかった。
この症状は水分のみを補給し、汗と一緒に排出される塩分などの成分が体内に不足すると起こるようだ。振り返ってみると、当時は水分補給は水のみだったので、条件は揃っていたように思える。
昨今は熱中症対策として水分だけでなく塩分補給も推奨されており、水分と塩分を同時に小まめに摂取すると、熱中症予防になるとされている。
なお、今は過去の教訓を生かし、水、麦茶、スポーツドリング、塩タブレット、水に溶かして使用するタイプの電解質補給タブレットを夏の登山では併用し対策している。
その他にも予防として日傘やハンディファンを利用し、暑さの厳しい夏の低山での熱中症対策に気を配るようになった。
■実体験トラブルその2 回避行動は無意味!? ハチによる追跡
夏は被害が報道されるスズメバチだけでなく、さまざまなハチの活動が活発になるため注意が必要だ。筆者がハチに遭遇したのは高尾山の6号路。沢沿いの比較的涼しい6号路を選択し、水が流れる飛び石のあるエリアを歩いていた時のこと。
オレンジの体に黒のラインが入った、流線型のハチだったことをよく覚えている。とっさのことで攻撃性の高いスズメバチなのか、比較的温和とされるアシナガバチなのか判断できなかった。
刺されてしまっては大変なので、登山に関する書籍などで推奨されているように姿勢を低くし、そっと後退。しかし、ハチは筆者の頭部付近をしつこく飛翔し、しばらく怖い思いをすることとなった。
幸いにも刺されることなく、飛び石エリアを抜けるころにはハチはいなくなっていたが、推奨された行動には意味がなかったのかと疑問が残ってしまった。
●身だしなみを整えるアイテムが原因だった!?
ハチ回避のための行動が間違っていたのか? 疑問を解消すべく下山後に色々と調べたところ、ハチは甘い匂いに誘引される場合があるという情報を得た。
振り返ってみたところ、筆者の整髪クリームが原因だったのではないかと推測している。微かに甘い匂いがしており、頭部周辺をしつこく飛んでいたからだ。
これ以来、登山の際には整髪クリームを使用せず、遭遇した場合の回避も前述の「ゆっくりと低い姿勢で後退する」方法で事なきを得ている。
さらにハチの接近そのものを予防するため、蚊取り線香を腰から下げるようにした。蚊取り線香に含まれるピレスロイドはハチにも効果があるらしく、殺虫よりも忌避効果を期待し使用している。
もちろん、刺されたときに備えて、抗ヒスタミン剤の含有された薬やポイズンリムーバーを携帯することも重要だ。