■実体験トラブルその3 汗冷えによる腹痛で撤退!

汗でバックパックの形にくっきりと濡れている背中

 季節を問わず、汗冷えは登山者の大敵だ。筆者は汗冷え対策として吸汗性・速乾性に優れたドライウェアを利用しているが、肌をドライに保てるので汗をかく夏山でも効果は絶大だ。短い休憩でもあっという間に乾き、涼しくは感じても寒くはなかった。

 しかし、下着がいつまでたっても乾かずべったりと肌に張り付く経験をした。化繊の下着を着用していたのだが、30分程度の休憩時間では乾かなかった。

 もちろん脱いで乾かすわけにもいかず、休憩中もずっと我慢していたが、ついに下腹部の冷えからお腹が痛くなりはじめた。

 進行予定のルート上にもトレイが設置されている山域だったが進むには不安があり、スタートした登山口近くにあったトイレまで下山することに決めた。

●夏山登山は、汗対策が必須事項

着替えと自作ハッカスプレー

 汗によってお腹を冷やして撤退を経験してからは、筆者は下着を変えた。吸汗・速乾性に優れている下着は高価な印象だが、登山中も快適で集中力が削がれることもなく、下腹部の汗冷えもなくなったので、費用対効果としては妥当ではないか。また、着替えも有効だ。

 人目に付かない場所を探して着替える必要があるが、乾いたウェアに着替えることで、速乾や吸汗の機能はリセットされる。そして下山後、公共交通機関を利用して自宅に向かう際はとくに、臭いの予防にもつながる。

 臭いの予防で個人的なおすすめは、市販のハッカ油を希釈して作るスプレー。爽やかな香りで、スプレーが気化する際に涼しく感じるので、清涼感も得られて一石二鳥だ。

■山の失敗から学んだ予防と備え

筆者おすすめの夏山トラブル予防アイテム

 夏山ならではのトラブルといえば、高い気温による熱中症を想像しがちだが、ハチや汗もトラブルのきっかけになることを忘れてはならない。

 もちろんトラブルが発生した際の備えも必要だが、トラブルを未然に防げれば撤退せず、楽しい山行を続けられる。

 安全登山の観点からもトラブル予防は重要だ。ぜひ筆者の失敗を反面教師に、そして自分自身でも夏山でどんなことが起こるかと想像をめぐらせ、予防策を考えよう。