■山も人も十人十色

食堂からの富士山を眺めながら。お茶が沁みます

 いろいろと取り組んでみたが、お客さんのためとはいえ、自分たちが楽しくないと続かないものだということがよくわかった。

 ある日、「え、これがウェルカムドリンク?」と首を傾げながら飲むお客さんがいて、なんだか、やってきたことを否定されたように感じてしまった。これは私の独りよがりなのだろうか?

 そうしたお客さんは全体で見たらごく一部のはずだけれど、まだまだ私は自分に余裕がない。ちっぽけな嫌なことに足を引っ張られて、気持ちをうまく消化できなくなってしまう。

 そんな時は小屋から一人で離れ、ハイマツの波に向かって「わああああ〜」と腹から声を出したりした。35歳にもなって、こんなことをしている自分が恥ずかしいのですが……。

 せっかくやりたいと決めたことなのに、少々嫌な思いをしたから「やめてやる!」と短気にならず、どうしたらブレずに続けられるか。一番は私たち迎える側が、人に出会えることの面白さや楽しさを感じ続けられないと、良い「ようこそ!」が提供できない。楽しさは伝染するから。

■やっていて良かったと思える瞬間

 もちろん嬉しいこともたくさんあった。1年目に来てくれたお客さんが、「久しぶり〜。きたよ〜」とお友達と一緒に遥々また会いに来てくれたり。

 こんなに、とてつもなく嬉しさが込み上げるような気持ちってなかなか味わえない。ただでさえ遠い山に、2年連続で来てくれる。年に1回の「元気だった?」の会話が山の上でできるなんてね。

 これから山小屋の未来に、どのくらいの心が踊るような出会いが待ち受けているのだろう。今年もワクワクしながらちゃんと胸を張ってお迎えできるように準備を進めるぞ!  ウェルカムドリンクも形を変えても提供する!

 3年目の営業を直前に控えた今、昨年を振り返りつつ今年の山を思いながら、そんなことを毎日考えている。ちょっとだけ気になるような、小さな出来事でクヨクヨしていても仕方がない。「これはどうだろう?」「あれをしてみたら?」となんでも挑戦してみるのが吉なはずだから、今年も張り切ってやっていくぞ〜。