■目に飛び込む白く輝く穂高連峰
稜線に出て歩みを進めると、不意に黒い槍の穂先が見えてくる。待望の景色に心臓が高鳴った。何度も訪れているのでわかっている景色なのだが、穂高連峰、槍ヶ岳の大迫力に猛烈に感動するのだ。一歩一歩近づく度に、白く輝く雪壁の穂高が迫るように現れる。ここは皆が思わず歓声をあげてしまうのではないだろうか。5時間かけて登ってきた格別なご褒美に感無量な瞬間である。南には御嶽山、乗鞍岳、焼岳も見え、裏銀座や表銀座の山々の稜線も続く、大パノラマな景色を楽しめる蝶ヶ岳は本当に最高である。
このロケーションの中、風もさほど強くなかったので、担いできたコーヒーとモンブランを並べ、手製の山頂カフェで心地よい時間を過ごした。“お楽しみ”を担ぐことも醍醐味である。
■これから楽しみな高山植物
「下りたくなーい」と名残惜しい……。ここは下り始めるとすぐにこの景色とさよならするのがとても寂しい。「また来るね」「いい景色を見せてくれてありがとう」と挨拶をして、蝶沢の急坂を私はまた慎重に下っていく。午後になり、気温が上がって柔らかい雪になっていた。登山口近くまで降りると、朝には気づかなかった小さな花が咲いていた。これからどんどんお花も増えてくるので高山植物が楽しみだ。
下山は3時間ほどで駐車場に着いた。4月とは思えないほどの気温で最後はノースリーブにもなった。行動着の調節もしながら快適に登山をしていきたい。蝶沢ルートについては最新の情報や実際に雪質を見て判断して欲しい。