■花の季節に訪れたい三室戸寺

 黄檗駅の次は三室戸(みむろど)駅。駅名の由来なのが、天台宗の流れをくむ本山修験宗の「三室戸寺(みむろとじ)」だ。

三室戸寺の本堂

 三室戸駅から徒歩約15分。長い坂道をのぼった先に山門が構え、そのまだ先の長い階段をのぼったところに本堂がある。結構な距離ではある。

 「花の寺」としても有名で、広さ約500坪の庭園「与楽園」には2万本のツツジと1000本のシャクナゲ、1万株のアジサイが植えられていて、花の季節には見事な光景が楽しめるという。

 ただ、シャクナゲは4月から5月、ツツジは5月、アジサイは6月が見ごろ。取材に訪れたとき、開花よりも早すぎたのが悔やまれる。

■平等院の参道にただよう茶の香り

 三室戸駅の次が、終点の宇治駅だ。いい方は悪いが、これまでのなんの変哲もない宇治線の駅に比べ、駅構内や外観の意匠は凝っている。

宇治駅の構内

 宇治駅の開業は1913年。しかし、95年に駅前の再開発にともない、現在の場所に移転された。新駅舎はそのときに建築されたもので、デザインは南海の特急ラピートも手がけた建築家、若林広幸によるもの。1996年にはグッドデザイン賞を受賞している。

 駅のすぐそばに宇治川が流れ、架かっているのが「日本三古橋」の1つに数えられる「宇治橋」だ。架橋は646年とも伝えられる。

宇治川に架かる宇治橋

 ここから平等院までの参詣道が延び、「お茶のふるさと」らしく、あちらこちらから茶葉のかぐわしい香りがただよっていた。

茶舗が軒を連ねる平等院の参詣道

 平等院をはじめ、宇治には源氏物語や紫式部、藤原氏に関連する観光名所が多い。インバウンド客の姿も多く、京都の東山や嵐山に匹敵するほどのにぎわいだ。

 宇治線は、住宅街の中を走る郊外型路線だといえる。ただ、そこはやはり京都。あちらこちらに由緒のある名所・名跡が点在している。住宅街に残る茶畑を見ると、感動すらおぼえてしまう。

 中書島駅から一気に宇治駅を目指すのも悪くはないが、途中下車して散策してみるのもオススメだ。