■浪速の極寒バスツアー
2日目も朝から長谷寺、談山神社という貴重なスポットに連れて行ってもらい、短いながらも非常に充実した時間を過ごさせていただいたことに感謝しつつ、奈良を後にした。次の目的地はローマで知り合った友人一家が待つ大阪。慣れない関西の私鉄を乗り継ぎ、空が暗くなり始めた頃ようやく目的の駅に着いた。
初めて日本を訪れた際に一度大阪を訪れている相棒だが、その時に体験した「道頓堀のネオンとお好み焼き&たこ焼きの美味しさ」は今でも鮮明に覚えているらしい。大阪へ着くや否や「今夜はお好み焼きやで」と言われて一気にテンションが上がった。ローマで知り合い、もはや親戚同然のお付き合いをしている友人一家と鉄板を囲み、ビールとお好み焼きで大満足の夜を過ごす。
大阪での我々の目的は友人一家に会うことと「食べること」で、それ以外は何も考えていなかったのだが、「おもろそうなツアー見つけたで」という友人の言葉に乗っかって、翌日は大阪市内を巡るバスツアーに参加することにした。
大阪城や桜ノ宮公園をバスの中から眺めるコースは、東京の「はとバスツアー」に匹敵する王道の観光ルートだ。お上りさん気分でウキウキと出かけたのだが、集合場所へ向かう途中、空からチラホラ白いものが舞い降りてきたのを見て青ざめた。「雪だ、雪!!」 滅多に雪を見ないローマ人の相棒は大喜びしているが、我々が乗る予定のバスは「水陸両用のオープンバス」。屋根だけは付いているが窓はなく、しかもコースの途中からは大川を渡る船に変身するという最新型である。
「はぁ〜い、皆さん! こんな寒い日にようこそ!」 元気なガイドさんの案内でバスに乗り込んだ我々は、事前にもらったカイロを握りしめ、来るべき寒さに身構えた。川の駅を出発し、大阪城を堀の外からチラ見しながら、バスは快調に大通りを飛ばして行く。すでに寒さで固まっているツアー客を盛り上げようと、浪速のガイドさんが飛ばし続ける元気いっぱいのギャグを全く理解できない相棒は、時々拍手を送るのが精一杯。
我々の祈りが天に届いたのか、天気は徐々に回復し始めた。微かな陽光が射し始めた時、ツアーのクライマックスが訪れた。桜ノ宮公園に着くと運転手と船長が入れ代わり、さっきまで道路を走っていたバスは船に早変わり。「スプラ〜〜シュ!」というガイドさんの掛け声と同時に、大川の中に突っ込んで行く。
そこから造幣局、なにわ三大橋、大阪の高層ビルの群れを眺めながら、しばしのクルージングを楽しんだ。極寒でなければ、さらに欲を言えば、これが桜の季節ならきっと最高だったと思う。それでも「観光バスに乗って王道のルートを回る」というのは、見知らぬ街を気楽に楽しみたい旅行者にはとても便利な手段であることを再発見した。ローマに戻ったら、市内の名所を巡る観光バスに乗ってみようと心に決め、浪速の極寒バスツアーは終了した。