■小動物が行き交う「しらびそ小屋」

●【動画】「八ヶ岳ブルー」のしらびそ小屋

 通年営業しているしらびそ小屋の前には、小動物たちのごちそうヒマワリの種が置いてあり、小屋の前に姿を現すこともしばしば。なんと野鳥やリスと共に食事を楽しむことができるのだ。

 ホンドリスや、のどの色がピンクのウソという鳥、シジュウカラ、ホシガラス、コゲラなど種類も多彩だ。また、小屋の前には真っ白に凍結したミドリ池があり、その先には天狗岳のギザギザとした稜線が見える。

 2年前の11月下旬はすでに雪景色で、筆者は友人としらびそ小屋に入って珈琲を味わった。友人は買ったばかりのカメラを片手にずっとリスを撮っていた。すばしっこいのでなかなか撮れないらしく、すっかり夢中になっていたが、その時筆者は背後の階段付近を歩くヤマネを見つけた。

 足音を立てずにさかさまになって歩く、まるで忍者のようなパフォーマンスとは正反対のほわほわとした愛らしい姿。写真集も出ているほどの八ヶ岳のアイドルの出現に大騒ぎしたが、友人が振り向いた時にはヤマネは隠れてしまってもういなかった。

■「ミドリ池」周辺の森に見とれる

凍結したミドリ池ではしゃぐ登山者たち

 クリスマスツリーのように雪化粧した針葉樹林に包まれて、あたりはしんとしているが、時折登山者の楽しそうな笑い声や、チチと小さく鳴く小鳥の声も聞こえる。森の中をカモシカが歩く姿を見たこともある。

 冬の間にここに来ると、どこか日本離れしたおしゃれな北欧の雰囲気があるなと思うことがある。しらびそ小屋を目指して冬に宿泊する女性が多いと聞くが、童話の世界に足を踏み入れたかのようなこのおしゃれな感じがよいのかもしれない。

大きなしらびその木と天狗岳(左奥)。八ヶ岳ブルーが映える

■下山後はゆったり温泉へ

 深い青に包まれた楽しい時間はすぐに過ぎて、日帰り登山の場合は、来た道を稲子湯温泉に向かい引き返す。冬場であれば15時ごろまでに下山するようにしたい。

 稲子湯温泉の上質な炭酸泉の風呂に入り体を温めながら、美しかった空の色や雪の姿、可愛かった動物の姿を思い出し、最高の休日を過ごした幸せをかみしめる。

 雪山の装備をしっかり整えて、暖かい恰好で八ヶ岳ブルーを見に行こう。筆者の日帰り登山時の雪山装備は以下の通り。参考にしてほしい。

【筆者のしらびそ小屋雪山装備】
【衣服】レイヤリングを考えた衣服・メリノウールの肌着、タートルネックシャツ、ウールセーター、ミッドシェル、タイツ、ウールソックス(替えを持参)雪山用の風を遮断するアウター上下(筆者はパタゴニアのシェルジャケット愛用)、ダウンジャケット

【雪山装備】わかん、アイゼン(前爪のある10本以上のもの)、ピッケルかストック、サングラスか登山用ゴーグル、目出し帽、帽子、手袋(インナー・防水性のあたたかい手袋、替え)、ネックウォーマー、雪山用の靴(断熱効果があり、アイゼン装着できるもの)、ゲイター(雪山用スパッツ)
【食料など】1日温かいまま保温できる水筒に湯をいれたもの、行動食(ナッツ・パン、甘いもの)非常食(カロリーの取れるもの)

【その他】保険証、身分証明(免許証)、マップ、携帯電話、タオル、ティッシュ、ビニール袋、コンパス、カメラ、救急医薬品(常備薬、絆創膏など)、充電器

 いくら風の強い山の上の稜線でないからといって、北八ヶ岳の寒さをあなどることなく、天気予報をしっかり確認し、晴天の日にぜひ行ってみてほしい。きっと宇宙のような濃紺のブルーに包まれた冬の北八ヶ岳に感激するに違いない。

【筆者の雪山コースタイムは以下の通り】※降雪やトレースによって変動するため注意
ミドリ池⇒(行きも帰りもゆっくり歩いてだいたい2時間)⇒しらびそ小屋

●【MAP】しらびそ小屋

しらびそ小屋:https://shirabisogoya.com/