秋〜初冬の季節になると「丹沢山地」へ出かけることが多くなる。丹沢は神奈川県の北西部に広がる山地で、神奈川県の面積の6分の1を占める。首都圏からアクセスしやすいことから、多くの登山者が訪れる関東屈指の人気エリアと言えるだろう。

 春から秋にかけて多くの登山者が訪れる丹沢山地だが、シーズンが過ぎた初冬には山に入る人も減り、静かな山登りが楽しめるようになる。

 今回は西丹沢の「畦ヶ丸山(あぜがまる)山」を紹介したい。筆者が何度も訪れているお気に入りの山だ。

■2本の大きな滝を持つ畦ヶ丸山

 畦ヶ丸山は丹沢西部、神奈川県足柄郡山北町に位置する標高1,292mの山だ。「あぜがまる」という山名の由来は、「アセビ(馬酔木)」が多く自生していたことから付けられたのではともいわれている。

 畦ヶ丸山山頂からは4本の尾根が延びており、北東の尾根は「西丹沢ビジターセンター」からの登山道で「東海自然歩道」にも指定されている。東海自然歩道とは、八王子と大阪・箕面を結ぶ1都8県2府に及ぶ全長1,734kmの長距離自然歩道である。

 畦ヶ丸山は周辺に急峻な谷がいくつもあり、丹沢山地でも有数の迫力ある滝を複数見ることができる。今回筆者が歩いた西丹沢ビジターセンターから畦ヶ丸山山頂までの道のりでは、2本の豪快な滝を見ることができた。

落差70mの「本棚の滝」。近くにいくと流れ落ちる水圧の凄さを体感できる(撮影:山歩ヨウスケ)

 落差40mの下棚(しもんたな、しもだなと呼ぶこともある)の滝と、落差70mの本棚(ほんだな)の滝があり、本棚は丹沢三滝のひとつに選定されている。

 「棚」とは、滝を指す言葉で、西丹沢地域では滝を「〜棚」と呼ぶことが多く、本棚や下棚の他にも、丹沢の最深部にある「遺言棚(ゆいごんだな)」や大滝沢の「地獄棚(じごくだな)」などがある。

落差40mの下棚の滝。こちらも豪快に水しぶきをあげながら流れ落ちる(撮影:山歩ヨウスケ)

 畦ヶ丸山山頂からの眺望はほとんどないため、この滝を目的に訪れる人も多く、一番の見どころと言っていい。

 西丹沢ビジターセンターから畦ヶ丸山に向かうと、先に見えてくるのが下棚の滝で、奥にあるのが本棚の滝だ。本棚の滝までの所要時間は1時間20分ほど。

 本棚までは登山道を並走するように西沢が流れており、透き通っているので目を凝らせば渓流魚が泳いでいる姿も確認できるはずだ。

登山道沿いの西沢。魚影が見えると嬉しくなる

■秋〜初冬は木々が枯れ、木漏れ日の登山道を堪能

 紅葉のシーズンも終わり、冬の始まりとなる季節には木々の葉が落ちる。すると、葉が生い茂っていた頃は眺望など全くなかった登山道に日が差し、枯れた木々の向こうには山々や、麓の街並みを見ながら歩くことができるのだ。筆者が秋〜初冬に丹沢へ出かけることの多い理由である。

枯れた木々の間から隣の山が見える。風景を見ながら登ることができるのは楽しい

 本棚から畦ヶ丸山山頂まではコースタイムで1時間10分ほどだ。本棚の滝を通過した後は西沢を離れ、山頂まで急峻な登りとなるので覚悟しておこう。やがて尾根沿いにでると広葉樹林帯となり、日差しの気持ちいい登山道を歩ける。

 山頂にはいくつかのベンチと、白石峠補修の記念碑が設置されている。山頂は樹々に覆われているので、展望はほとんどない。

山頂に設置された記念碑。白石峠は大室山から三国山に延びる甲相国境尾根の東部にある峠

 丹沢山地も年が明けて厳冬期(1〜3月)には積雪し、雪山となる。例年、年内が無積雪登山を楽しめるチャンスとなる。ぜひ静かな山歩きを楽しんでほしい。

 丹沢山地では年内は雪が降ることがあっても積もることは少ないが、天気はしっかりと確認すること、万が一に備えてチェーンスパイクなど滑り止めや防寒着を携帯して出かけよう。

 

【ルートタイム】
西丹沢ビジターセンター⇒(50分)⇒下棚の滝⇒(25分)⇒本棚の滝⇒(2時間15分)⇒畦ヶ丸山山頂⇒(2時間15分)⇒西丹沢ビジターセンター

●【MAP】西丹沢ビジターセンター