一般に親しまれているレジャー要素の強い登山からは縁遠いが、ヒマラヤなどの高所への登山や未踏の山のピークを目指して難易度の高いルートをクライミングし、限界に挑む登山者たちがいます。そんなアルパインクライマーの世界は一体どんなものでしょうか?
山岳カメラマンとしても精力的に活動を続ける、クライマーの三戸呂拓也氏に中央アジア、キルギスとタジキスタンの国境に聳える「レーニン峰」登山の様子を語ってもらいました。馴染みのない中央アジア、さらに標高7,000mを超える高所での登山の様子はいかに?
「2023年夏、私は単身キルギスに渡りレーニン峰に登った。レーニン峰は国際キャンプの名残があり、様々な国から多くの登山者が集まる人気の山である。特別な能力は不要だが、標高は7,134m。登頂には最低限の体力や雪上技術、幕営生活能力、そして晴天のタイミングを必要とする」:三戸呂拓也氏談
■“中央アジアのスイス”キルギスへ
中央アジアの一国キルギス共和国。名前を聞いたことがあっても、具体的にイメージできる人は少ないかも知れない。「シルクロード」の一部として認識されているキルギス。砂漠のイメージが強いエリアだが、実は国内に砂漠はなく、一面に花々が咲き乱れる緑の高原と雪を纏った白銀の峰々が連なる景色から、“中央アジアのスイス”と称されていたりもする。
■レーニン峰って、どんな山?
レーニン峰はタジキスタンとの国境にほど近い、キルギスの南端に位置する山である。時代や地域によって呼び名は多数存在するが、“Mt.Lenin”が最も周知されている山名と思われる。これは革命家のウラジーミル・レーニンに由来し、1928年の初登頂時に採用された山名らしい。ちなみに山頂には、今もレーニンの像が置かれている。登山シーズンは7~8月。一般的には20日間ほどである。
首都ビシュケクから国内線に乗り、レーニン峰に最も近いオシュ空港に飛ぶ。今回は登山の前後で、オシュに滞在した。治安が悪いという情報もあったが、滞在中それは感じなかった。現地の人々は友好的で慎しく、どこか日本人に近い印象であった。昨今にあっては珍しく日本より物価が安い国であり、レストランでも1000円で腹いっぱい食べられる。日中は暑いため人通りは少なく、逆に夜になると道路は歩行者天国になり、賑やかだ。その光景を道端から眺める時間が楽しかった。オシュの通貨ソムへの換金はビシュケク以降でしかできないが、可能なら街中の換金所で行うのが最もレートが良い。