本州の多くは梅雨の最中。登山日和はなかなか訪れないが、この時期が過ぎればいよいよ本格的な夏山シーズンの到来だ。すでにこの夏の山行プランを立てている人もいるだろう。
一般に親しまれているレジャー要素の強い登山からは縁遠いが、ヒマラヤなどの高所への登山や未踏の山のピークを目指して難易度の高いルートをクライミングし、限界に挑む登山者たちがいる。そんなアルパインクライマーの世界は一体どんなものだろうか? その一人、山岳カメラマンとしても精力的に活動を続ける、クライマーの三戸呂拓也氏に語ってもらう。
山の上でのテント泊や食事などの生活術も重要な登山技術の一部だ。長い山行ほど、いかに手際よく美味しいものを用意できるか、当然食材の重さや燃料、ゴミの問題も気になる。登山者なら、ひょっとしたら今後の山行の参考になるかもしれない……。登山をしない人でも、テレビ、新聞などでときおり話題になる高所登山の裏側の生活は気になるのでは?
■豪勢なベースキャンプ! わびしいハイキャンプ!
ベースキャンプ(以下BC)とハイキャンプでは、大きく異なる。
基本的に、BC(ベースキャンプ)はコックを雇って連れて行き、料理はほぼお任せになる。現地食を作ってくれることが多いが、日本隊に慣れているコックは巻き寿司やトンカツなどの日本食、ピザやハンバーガーなどのコンチネンタル料理を振る舞ってくれることも。場所にもよるが、材料はふんだんに用意し、腹一杯食べさせてくれる。海外登山に慣れていないメンバーと一緒の時は、自分がキッチンに立って食べ慣れたものを作ることも多い。
ハイキャンプは、基本的に軽くて高カロリーなものが食事メニューとなる。多いのはアルファ米と味噌汁やスープなど。しかし厳しい登攀などになると、持っていく食糧を減らさざるを得ない。100gのアルファ米を2人で分け、お茶漬けでかさ増しして食べたり、朝食はビスケット数枚と紅茶のみだったりする。高所では食欲が減り、もともと少食な人はそれでちょうど良かったりする。しかし私は燃費が悪いクライマーなので、食料を減らすのは寂しい……。
■弱ったときは日本食!
私はわりと何でも美味しく食べることができ、海外遠征では現地食も楽しみだ。ネパールのダルバート、パキスタンのカレー、各国のスープなど、どれも好きである。
ただ、体の弱っている時や体調を整えたい時は、やはり日本食がありがたい。そのため日本の調味料は、一通り日本で買って持っていく。出汁やお茶漬けの素、佃煮や梅干しなど。粉末の経口補水液なども重宝する。最近は体調管理も込めて、携帯用のマヌカハニーを毎日の紅茶やコーヒーに入れて飲んでいる。