アウトドアブランドの「コロンビア」は2024年11月、札幌市と包括連携協定を締結した。コロンビアのアウトドアの知見と札幌市内および近郊の自然を生かし、地域の活性化を狙いつつ持続可能な世界都市を目指すものだ。

 連携協定の取り組みとして企画されたアウトドアプログラムが「Columbia OUTDOOR ACADEMY for Beginners 2025」。主にアウトドア初心者を対象に、アウトドアアクティビティへの一歩を踏み出すためのきっかけづくりや自然の魅力を伝えていく。

 2025年6月には開校式(机上講習)、7月13日にはニセコアンヌプリを舞台とする登山バスツアーが実施された。

 そして今回は、8月6日に札幌市消防局南消防署の南山岳救助隊との連携プログラムとして、登山における「もしものケガや事故に備えるためのセルフレスキュー」をテーマにした机上講習、および実演会を開催した。

 当日は35名が参加し、そもそも事故に遭わないための計画・準備の仕方や、ケガをしてしまった場合の対処法を学んだ。ここでは当日の様子を写真を交えながらレポートする。

■ケガや事故を未然に防ぐための計画・準備が大前提

 「Columbia OUTDOOR ACADEMY for Beginners 2025」のプログラムは、2回の机上講習を含む全5回。フィールドでのプログラムの3回(7月・9月・10月)はすべて札幌駅の北口を発着とする日帰りのバスツアーとなっている。今回は全プログラムのうちの3回目。参加無料の机上講習・実演会で、札幌市庁舎の1階ロビーで開催された。

参加者にはコロンビアのノベルティグッズが配られた

 当日は札幌市消防局南消防署から小笠原光隊長率いる6名の救助隊が登壇し、山での救助要請の流れやケガをしてしまった際の三角巾・ポールを用いた固定の仕方など、セルフレスキューに関するレクチャーがあった。

 プログラムは前半と後半にわかれ、前半ではそもそも事故に遭わないようにするための事前の計画や持ち物をテーマに、小笠原隊長とりんゆう観光でガイドを務める植田拓史氏から机上での説明があった。

 事前の準備について植田氏は「当たり前のことかもしれないですが、まずは登る山の登山口やルートといった情報に加えて、天気予報を出発当日も含めて確認します。地上の天気予報の気温と山頂の気温には差がありますし、終日晴れの予報だとしても山の天気は変わりやすいため重ね着できるものや、レインジャケットも持参しましょう。当日は出発する前に家族や友人など、まわりの人に対して『いつどの山に、どの登山口から登るか』といった具体的な情報をきちんと伝達しておくことが重要」と説明。

 それに対して小笠原隊長は「具体的な情報があるかないかが、捜索・救助活動においては早期発見に大きく影響します。山では携帯電話が圏外になってしまうケースも少なくないため、できる限り周りの人に共有してから入山することを推奨します」とコメントした。

当日は35名が参加した

■後半は救助要請の流れに関する説明と応急処置の実演

 10分間の休憩をはさみ、後半には救助要請の流れやポイントについて小笠原隊長から説明があった。

 山での119番通報の際に有効な情報については「山の名称だけでなく、登り始めた登山口の名称、コースの名称といった情報も有用です。場合によっては通報時に指令員の指示のもと、携帯電話の地図アプリを操作していただきながら位置を確認することもあります」と説明するとともに、登山アプリや地図アプリを活用して自身の位置情報を把握することが重要であると話した。

救助要請の流れについて説明する小笠原隊長

 加えて、待機中の行動については「携帯電話の不用な使用を避け、できるだけバッテリー残量を減らさないようにし、複数人で待機する場合は、落石や滑落といった二次災害を防ぐためにも、無理に要救助者に近づかないようにしてください」と注意を促した。

 その後は応急処置の方法について、A・B・Cの3つのエリアにわかれて実演形式で、レクチャーがあった。

実演で応急処置のレクチャーをする隊員と参加者

 エリアAでは「三角巾を用いた応急処置(腕)」と「直接圧迫止血法(脚)」に関して、エリアBでは「ポールと三角巾を用いた脚の固定法」に関してレクチャーされ、参加者も試していた。

グループにわかれてポールと三角巾を用いた固定法を試す参加者

 エリアCでは「バックパックと厚手のウェアを用いた背負い法」として、同行者が動けなくなってしまった場面を想定し、安全な場所への運搬方法についてレクチャーがあった。バックパックとウェアのみで成人男性を背負う様子を見た参加者からは思わず驚きの声が漏れていた。

バックパックと厚手のウェアを用いた背負い法

 講習の最後には、小笠原隊長が「ケガをしないことが何よりですが、もし山で自分がケガをしてしまった時や、仲間がケガをしてしまった時に、今回紹介した方法を少しでも役に立ててもらいたい」と締めくくった。

 参加者からは「三角巾を含むエマージェンシーキットは持っているものの、今まで使い方が曖昧だった。今回のレクチャーを受け、実際に自分でも使ってみたことで、使い方がイメージできるようになった(30代女性)。「今回のようなセルフレスキューに関する実演は、山登りで自分や仲間がケガをしてしまった時に役立つので大変勉強になった(60代女性)」といった感想が寄せられた。

 次回はフィールドでのバスツアーを予定している。9月6日に塩谷丸山、10月5日には樽前山を目指す。いずれも比較的登りやすい山で初心者にもおすすめだ。

今後のプログラムの詳細・申込は、特設サイトで受付中!