■絶好のサイトフィッシング日和
取材日の午前中は小雨のパラつく空模様でした。空いていることを期待していたのですが、平日にも関わらず続々と釣り人が集まってきました。釣果を望むならむしろ好条件だと判断したのかもしれません。広い川原に降りると皆、思い思いのポイントへ移動して程よい間隔でバラけ、窮屈さは感じませんでした。
この夏の暑さでダメージを受けたせいでしょうか、すでに葉を落としてしまっている木々も多いですが、川岸に点在するモミジは鮮やかに色づいていました。爽やかに晴れた日の釣りは気持ちいいですが、曇りの日や雨がそぼ降るような光景もしっとりと落ち着いた情緒がありますね。水面の反射が少ないので、流心に絡んで泳ぐ魚たちの様子も見えて“サイトフィッシング”日和でした。
■強烈なファイト! 夢中で過ごした釣りの一日
筆者はフライフィッシングです。道具立てに悩むのが冬季釣り場の特徴で、スレた魚を相手にするには、ティペット(ハリス)などを細くする必要がありますが、同時に大型で運動量の多いニジマス、しかもハコスチを相手にするには仕掛けの強さも必要です。この矛盾するようなバランスが絶妙で悩みどころです。
いざ釣りを開始すると、良型のハコスチがフライを咥えてくれました。立て続けにジャンプする姿に見惚れながらも、バラさないようにハラハラしながらのやり取りです。無事にネットに誘うと、安堵と共に肩の力が抜けました。
昼食もそこそこに、夢中で釣りを続けていました。気づけば、渓を囲む山の端に日が沈んでいました。徐々に魚たちの活性が上がってきたようです。流れに沿わせるようにフライを下流に流し込むと、ひったくるような強烈な引きと共に巨大な魚影が水面を破りました。悠々とジャンプするその姿は圧巻のサイズです! 「あんなの取れないかも……」と弱気になったのも束の間、あっという間にバラしてしまいました。残像だけがくっきりと脳裏に残っていました。「また来ないとな」。