11月になると、日中も暑さを感じることが少なくなり、羽織るものが必要になってきた。アルプスや2,000mを超える山では、着々と冬が近づいている。そんな季節になると快適になるのが、低山登山だ。

 11月に楽しめる山としておすすめしたいのが「金時山(きんときやま)」だ。昔話や童話でお馴染みの「金太郎」に由来し、「金太郎」は坂田金時の幼名で、金太郎のシンボル「まさかり」が山頂の標識になっている。

 小さい頃に聞いたことのある童話の舞台となっている山と言うだけで、懐かしささえ感じる。今回は金時山の登山ルートを紹介する。

■長尾峠から丸岳を越え、乙女峠へ

スタート地点の「長尾峠(ながおとうげ)」 御殿場市の「富士見十二景」のひとつに選定されている

 紹介するルートは、長尾峠から金時山を目指すルート。金時山への登山ルートとしては歩く人も少なく、静かな山歩きを楽しめるコースだ。このコースの魅力は尾根沿いを歩くので、見晴らしがいい箇所が多い点。富士山の景色だけでなく、眼下に広がる芦ノ湖や箱根外輪山の景色も楽しみながら歩ける。

丸岳に向かう登山道。木々が少ないところが多く開けている

 長尾峠から45分も歩くと「丸岳(まるたけ)」に到着する。丸岳は箱根外輪山のひとつで、標高は1,156m。丸岳の山頂付近からは箱根の景色を楽しめる。

芦ノ湖や駒ヶ岳、大涌谷などの展望が楽しめる

 丸岳を過ぎると一旦下りとなり、金時山まではいくつかのアップダウンを繰り返す。ただひたすら登って山頂を目指す山よりバリエーション豊かで飽きない。

 丸岳から下り切ったところにあるのが「乙女峠(おとめとうげ)」だ。標高1,005m地点にある乙女峠は昔、仙石原の娘が父親の病気を治そうと、峠の先の地蔵堂に日参し満願の日に父親の病気は治ったが、彼女は雪に埋もれて死んでしまったという言い伝えがある。彼女の霊を哀れみ、「乙女峠」と呼んでいるそうだ。

 そんな乙女峠からは樹林帯の間から富士山の絶景が見られる。ベンチも設置されているので休憩するのにもちょうどよい。

乙女峠から眺める富士山と、眼下に広がる御殿場の街