2023年、夏山の遭難事故は過去最多になったと話題になっている。新型コロナウイルスの5類移行などにより、登山者が増加したことで遭難者も増加したようだ。

 晩秋に入り山を歩くのにちょうどよい気候になってきた。紅葉狩りやキノコ狩りなど、登山以外にも低山に入る機会が多くなる。

 低山と聞くとお手軽、気楽に行けるというイメージがあるからか、遭難とは無関係といった印象を持っている方も多いだろう。だが実際は日本アルプスなどの高山で事故が減少する一方で、身近な低山での遭難者は増加傾向にあると言われている。警察庁の調べによると2022年の遭難者数は3506人、対前年比431人増となっており、10年間で3割以上増加しているのだ。遭難の原因は道迷い、転倒、滑落が70%以上とされている。

 ここでは低山の認識の誤解を解説し、低山に潜む危険性を紹介する。これからの低山登山の参考になれば幸いだ。

■低山の落とし穴 1 「お手軽」「気軽」のイメージは大間違い

登山道の入口が閉ざされていると勘違いする場所。左手奥に登山道が続いている
まっすぐ進みたくなる道。実際の登山道はフェンスに沿って右に曲がる

 低山は1,000m未満の山のことを指すことが多い。標高がそれほど高くない山は、冬に雪が積もりにくいため、1年を通じて標高の高い山より登りやすいのは確かだ。

 だが、だからといって軽い気持ちで入山してはならない。低山も標高3,000m級の山も同じ自然である。一歩山で迷えば、方向感覚がわからなくなり、知識や装備がなければあっという間に遭難者になってしまう。

 低山だから体力がなくても大丈夫という認識も間違っている。低山であっても、標高の高い山と同程度の体力を要することは珍しくなく、高山と同じように危険な状況にも陥る。山に入るからには終日歩ける体力と、地図読みは最低限必要となる。

■低山の落とし穴 2 低山は道が整備されていないケースが多い

 低山でも人気の山であれば、舗装されており登りやすい印象がある。しかし、それ以外の低山では登山者が少ないためか、道があまり整備されていない。

 「夏草が伸び放題」「倒木が放置されたまま」「危険個所がいつまでも対処されない」「登山口がわからない」など。地元の有志の手で守られているのはまだよい方で、まったくの手つかず状態の道も多く存在する。

■低山の落とし穴 3 目印が少ないので道に迷いやすい

登山道が荒れていて目印の判別ができない

 ハイカーに人気の山では標識が設置されており、登山道の目印もはっきりしているが、マイナーな低山では目印がまったくない場所もあり、GPS機能のついた地図アプリや、紙地図を使わないと登山道を見失うことが多い。