■真っ白な山頂、ツルっと滑りそうな下山
山頂に着いたのはいいけれど、どこが山頂? となるような真っ白な景色。他の登山者に聞くと、小さな祠(ほこら)が山頂だという。祠には「磐梯明神(ばんだいみょうじん)」が祀られているとのことだが、凍り付いていて寒々しい姿だった。
山頂からは晴れていれば360度の大展望で、「猪苗代湖(いなわしろこ)」を望む景色が綺麗とのことだが、この日は残念ながら見ることは叶わなかった。
山頂で少し休憩した後、ピストンで八方台登山口へと戻る。凍結した岩と雪の中を降りるのは、ツルっと滑りそうで手に汗を握った。筆者を含め、ほとんどの登山客が慎重に時間をかけて歩いていた。
「弘法清水小屋」まで戻ると、霧が晴れ、ようやく景色を拝むことができた。太陽が出たことで気温が一気に上がるのを感じた。その後の下山は暖かくなって緩んだ雪に苦戦したが、幸い転倒することなく無事に登山口まで戻ることができた。
■秋山でも、油断しないで準備を万全に
今回の登山で得た教訓は、秋の山に登るということは積雪や凍結のリスクがあることや、山頂付近では気温が氷点下になる可能性があるということだ。そのため、以下の準備をして万全の状態で登山をする必要がある。
●チェーンスパイク、軽アイゼンを携行する
積雪や凍結路では「チェーンスパイク」や「軽アイゼン」といった登山靴に取り付ける滑り止めのアイテムが必要だ。軽く積もった雪道や凍結路では効果的。突然の天候変化に備える意味でも、秋の山に行く時は常に携行するべきだ。
●天候や登山道の状況を事前にチェック
予定している登山の数日前から山域の天気をこまめに確認することも大事。当日晴れ予報でも、その前に雨や雪が降っていたら、山頂付近は積雪や凍結している可能性がある。
また、登山道の状況は登山アプリで他の登山者の記録を見ることで分かることもある。そして、山小屋があれば小屋のホームページに登山道の状況を載せてくれている場合があるので併せて必ずチェックをしよう。
●秋に適した登山服のレイヤリング
秋の登山ではレイヤリング(重ね着)を意識しよう。適さない服装だと行動中は大丈夫でも、止まった時に体が冷えてしまう。
登山の基本的なレイヤリングはベースレイヤー(肌着)、ミドルレイヤー(中間着)、アウターレイヤー(上着)。気温や天候に合わせて組み合わせることで、快適な登山をすることができる。
筆者の秋のレイヤリングは、ベースレイヤーにウール素材のものを着用している。化繊の方が吸湿速乾性は優れているのだが、乾く過程で熱を奪うため、汗をかいた後でも体が冷えにくいウールを愛用している。
そして、ミドルレイヤーに伸縮性と保温性に優れた薄手のフリースを着用し、アウターレイヤーにソフトシェルやレインウェアなどの雨や風を防いでくれるものを着用している。
基本的に登りはベースレイヤーとミドルレイヤーで行動し、山頂や稜線など風が強く吹く場所ではアウターレイヤーを着るという感じだ。
●休憩時の寒さ対策
忘れてはいけないのが、休憩時の寒さ対策だ。行動中は快適でも、止まった瞬間寒くて震えるのが秋の山。そのため、休憩時に羽織るためのコンパクトになるダウンジャケットや、手を寒さから守るためのグローブ、身体を温めるための飲料を保温ボトルで持って行くなどの対策をしよう。
寒くて休憩がまともにできないとなると、体力の消耗が激しいだけでなく、集中力低下による転倒などの事故のリスクが上がるので、寒さ対策はとても大切だ。
■リスクを減らして楽しい秋山登山を!
秋の山は紅葉が綺麗で、涼しくて登りやすい。そんなイメージを持つ人も多いのではないだろうか。筆者もそう思っていた時期があったが、今回の登山を経験してからは楽しいことばかりではなく、危険も隣り合わせだということを強く実感した。
しかし、万全に準備をして登ることで、リスクを減らして比較的安全に登山をすることができる。紅葉も綺麗だが、木々が凍り付いた樹氷もとても美しい。この記事を参考にして、秋から冬にかけての登山を楽しんでいただけたら幸いだ。