駒の小屋周辺に広がる自然の庭園「草原と駒ノ大池」(撮影:ブラボーマウンテン編集部)

 福島県南会津郡桧枝岐村(ひのえまたむら)に位置する会津駒ヶ岳。その山頂直下には「駒の小屋」という山小屋がある。登山者の間では評判が高く、一度泊まるとまた泊まりたくなると言われている。山小屋から眺める美しい自然風景や登山者同士が気軽に語らう空間など、居心地のよさを感じられる場所なのだ。筆者は山仲間から紹介されたことを機に、駒の小屋に泊まってきた。その宿泊体験で感じた山小屋の魅力をレポートする。

■山小屋周辺に広がる美しい自然風景

草原に広がるハクサンコザクラの群生(撮影:ブラボーマウンテン編集部)

 7月下旬に滝沢登山口から出発し、約3時間かけて会津駒ヶ岳山頂直下にある「駒の小屋」に到着した。すると、駒の小屋周辺には美しい自然風景が広がっていた。緑に覆われた草原のなかに、駒ノ大池の澄んだ水面が広がり、まるで天空に浮かぶ自然の庭園のようだ。さらに、池の周りにはワタスゲやミヤマリンドウが咲き誇り、心を穏やかな気持ちにさせてくれる。

 ひときわ目をひいたのは、ハクサンコザクラの群生だ。遠目に見てもたくさん咲いているのがわかるほどで、草原を薄紫色に彩っていた。

 自然の美しい景色を目の前に、「ずっとここに居たい」という思いが込み上げてくる。そして、時間を忘れたかのように景色を眺めていた。

■思わず欲しくなる! オリジナルグッズが並ぶ売店

 会津駒ヶ岳・中門岳へ登頂した後、駒の小屋へと戻ってチェックインをする。小屋番の方に名前を告げると、快くお出迎えしてくれた。

駒の小屋の売店(撮影:ブラボーマウンテン編集部)

 小屋の玄関には売店があり、Tシャツや手ぬぐい、飲み物やレトルト食品などが販売されている。なかでも気になったのが、オリジナルデザインのTシャツだ。バックプリントには、手書き風の温かみのあるメッセージが書かれている。

宿泊者限定のオリジナルTシャツ(撮影:ブラボーマウンテン編集部)

 思わず欲しくなってしまった筆者は、「だからもうなんにも考えないでお山に行けばいいんだよ。」というメッセージとカモシカが描かれた宿泊者限定のTシャツを購入。ゆるくて可愛らしいデザインと素敵なメッセージがとても気に入った。

■登山者同士の交流を楽しむ

ベンチでご飯を食べながら登山者同士の交流を楽しむ(撮影:ブラボーマウンテン編集部)

 小屋前にはベンチがあり、景色を眺めながら時間を過ごす。ご飯時になると宿泊者は集まり、各々食事の支度をする。そして、登山者同士の交流が自然と始まるのだ。どこから来たのか、どんな山に登ってきたのかとか、他愛のない会話をしている。山好きならではの山トークで話が盛り上がった。

 香川県から足を運んでいる年配の男性は、道中で磐梯山や西吾妻山へと登ってきたと言っていた。また、とある男性3人組みパーティは大阪から来ていた。この日の宿泊者は12名いたが、遠方からの人が多いようだった。

2階屋根裏部屋の寝室(撮影:ブラボーマウンテン編集部)

 日が沈むと、小屋内にはランプが灯り、就寝の準備に入る。寝床は2階の屋根裏部屋だ。部屋には一人ひとりお布団を用意してくれている。寝袋を持参しなくてもいいし、寝袋よりも快適に寝られるので、嬉しいサービスだ。

■爽やかな朝とご来光

駒の小屋から眺めるご来光(撮影:ブラボーマウンテン編集部)

 翌日、朝4時半頃に目を覚まし、外に出た。夏ではあるが外は涼しく、防寒着を着ていないと肌寒いくらいだ。空は朱色に染まっており、日の出を迎えようとしていた。日の出の瞬間、宿泊者たちはおもむろにカメラを構え、写真を撮り始める。暖かな太陽の光に照らされ、爽やかな朝を迎えられた。

 下山しようとしたところ、小屋番の方々が見送ってくれた。「ありがとうございました」と素敵な笑顔を向けてもらい、心が温かくなる。小屋番の方々とは少ししか話す時間はなかったが、細やかな配慮や居心地のよさを感じられた。今度は、草紅葉の見られる秋にまた訪れたいと思った。

■会津駒ヶ岳の「駒の小屋」で素敵な一時を過ごそう

 会津駒ヶ岳への登山は、体力に自信のある健脚なら日帰りでも登れるが、駒の小屋へ泊まる小屋泊がおすすめだ。山小屋周辺の美しい自然風景をゆっくり眺めて、小屋番の人や宿泊者同士での交流をしたり、素敵な山の時間を過ごすことができる。また宿泊者限定のグッズを買って、思い出を形に残すことができるのは駒の小屋ならではの魅力といえるだろう。

「駒の小屋」の詳細
・宿泊費:3300円
※宿泊時はインナーシーツや手ぬぐい(枕カバー)を持参
・食事の提供なし
※売店にてレトルトや飲み物などを販売

尾瀬国立公園 会津駒ケ岳 駒の小屋 :komanokoya.com

■【MAP】会津駒ヶ岳