■低山の落とし穴 4 目印が多過ぎて迷いやすいケースも

右が正しいルート。左を進むと道に迷うことになる

 目印が判りづらいケースとは真逆になるが、目印が多すぎて道に迷うこともある。二つに分かれた道のどちらにも目印のような紐がついていたり、登山口が分かりにくかったりして、どちらに進めばよいかわからず、間違った方に進むと行き止まりということもある。

 かくゆう筆者も低山の登山中、いつの間にか正規の登山道から大きく外れてしまったことがある。地元の方が作ったのか、地図にない道を進んでしまったのだ。無秩序にルートが作られているのは低山ならではといえるが、登山前にはもちろん、登山中にも道をしっかり確認しながら進まなければならない。

■落とし穴 5 登山者が少ないので困ったときに助けが呼べない

ここを右に曲がるという意味で黄色の目印を塗ってある。二つの道があるようにも判断できてしまう

 これは低山に限らずだが、ハイカーに人気の山ではルートを外れなければ、動けなくなった時にも周囲の登山者に助けを求めることができるだろう。しかしハイカーの数が少ない低山では、ルートによっては丸一日誰とも会わないことも珍しくない。

●意外に多い「転倒による遭難」と「滑落・転落」

 遭難で最も多い「道迷い」の次に多いのが転倒だ。崖や斜面などで滑り落ちないまでも、登山道で転倒し身動きが取れないほどのケガをして、その場から動けなくなってしまうこともある。低山とはいえ厳しいアップダウンや不安定な足場、急峻な斜面もあるため慎重さが求められる。

 筆者の知人の一人、登山歴30年を超える山岳会に所属するベテランハイカーが、低山で道に迷って急斜面から這い上がるのに苦労してなんとか遭難を免れた経験を聞いたことがある。道幅が狭く、足を滑らせると危険な道もあるため、低山だからといって甘くみないことだ。

 低山でも滑落、転落する危険があるという認識を持って、自分の体力と見合った山であるかの判断をすることが必要だ。

 低山で何らかのトラブルにあった場合、ハイカーの少ない山では偶然通りかかる人に助けをお願いできる確率は低い。高山に登る時と同様に登山届の提出や、事前に入山することを家族や知人に伝えておくことでいざと言う時の助けに繋げることができる。

■低山こそ注意して登山する

 低山ほど軽装の登山者をよく見かける。山を気軽に楽しむのは賛成だが、舗装されていない道をほとんど装備を持たずに歩いているのを見ると、不意の事故が起こった際にどう対応するのだろうかと不安に感じてしまう。

 低山に入る時も、救急キットや防寒対策などの準備を万全にする必要がある。山歩きに気持ちよいシーズンだからこそ、正しい知識や装備で低山登山を存分に楽しんで欲しい。