■3日目「最終日」秋晴れの紅葉ロード

晴れた鹿島槍ヶ岳に向かう登山道(撮影:鶴岡 亜矢子)

 こうして迎えた3日目、待望の晴天が筆者を出迎えてくれた。あえて2泊でゆっくりとしたスケジュールを組んだお陰だ。晴天の中、もう一度鹿島槍ヶ岳山頂へと向かった。

 爺ヶ岳から鹿島槍ヶ岳へ続く稜線は森林限界を超えた標高で見晴らしがよく、剱岳や黒部渓谷を眺める絶好の展望台だ。紅葉シーズンは稜線上に生息するチングルマが赤く染まり、天空の紅葉ロードを作り出す。

深紅に染まる紅葉のチングルマ(撮影:鶴岡 亜矢子)

 秋は大陸からやってくる涼しく乾いた空気の高気圧が空を青くさせ、紅葉の赤や黄色を引き立てる。11月には雪が降り、厳しい冬が来る少し前の北アルプスのドラマチックでビビットな色合いを少しでも上手に写真に収めようとカメラを構えた。

緩やかな尾根に紅葉が美しい種池山荘と剱岳(撮影:鶴岡 亜矢子)

 鹿島槍ヶ岳から爺ヶ岳への稜線は紅葉の風景も格別であるが、同時に辺りの地形も観察できる。日本列島に大昔にあった大きな裂け目「フォッサマグナ」の西の端にあたる「糸魚川静岡構造線」が鹿島槍ヶ岳のすぐ東にあり、黒部ダム建設の際、トンネル掘削時に難工事となった原因の破砕帯など、地殻変動の激しい山域として知られている。

 また、剱岳付近は今から11万年前から約1万年前まで山岳氷河が覆っていたと考えられており、2012年4月には論文発表により、学術的に3つの氷河が認定された。氷河地形である急な崖と平らな地形を形成する「カール」や、氷河が削り取った岩石等が堆積した「モレーン」、水が凍結と融解を繰り返し形成する地形「周氷河地形」により生じる二重山稜も見ることができる。

①②③は2012年に認められた氷河(撮影:鶴岡 亜矢子)

 展望を満喫し種池山荘まで戻ればあとは柏原新道を下るだけだ。振り返ると晴れて初めて見えた爺ヶ岳南峰の紅葉が美しい。

周氷河地形の作用により、縞々模様のように生え紅葉するチングルマと爺ヶ岳南峰(撮影:鶴岡 亜矢子)

 種池山荘からは標高を下げ樹林帯に入っていくが、まだカメラはしまわない。白い枝に黄色い手を広げてダケカンバの鮮やかな紅葉が待っているからだ。

 途中、山岳フォトグラファーの菊池哲男さんに声をかけられた。筆者は写真集『山の星月夜  眠らない日本アルプス』を所持している大ファンなので、とても驚いた。下山開始時に振り返ると、菊池さんが筆者と同じポイント、同じような場所で三脚を構えているのが見え、さらにうれしくなった。

水平道付近のダケカンバ紅葉(撮影:鶴岡 亜矢子)

 秋の北アルプス爺ヶ岳、鹿島槍ヶ岳の登山の紅葉を満喫して下山した。写真を見返してみると、晴れの美しい山の景色や冷えた空気、裾へ広がりゆく紅葉を真っ先に思い出す。秋は短く、すぐに雪が降る北アルプスの一瞬のきらめきをぜひ見てほしい。

 冬が来ると、雪が溶けるまでは柏原新道は通行不可になる。厳冬期は鹿島山荘から東尾根を登るルート、立山黒部アルペンルートが開通する4月以降は扇沢から八ツ見ベンチまでは柏原新道を登り、その上は爺ヶ岳南尾根を直登することになる。

 南尾根への分岐点には看板もあり、東尾根も南尾根も目印のテープがあるようだが、どちらも雪の斜面を一気に登る厳しい山登りとなるため、登山道の状況を事前に確認のうえ入山しよう。

 

 ●爺ヶ岳

住所:〒398-0001 長野県大町市平

●鹿島槍ヶ岳

住所:〒398-0001 長野県大町市平