■山々と只見川が作り出す心に残る風景
麓から仰ぎ見た、あの尖った山の先までは、南側の「久保コース」からアプローチするのが一般的。駐車場から90分ほどで、標高828mの蒲生岳山頂となる。360度の大展望は感動レベルの絶景で、おなじ只見町の代表格「会津朝日岳」や「浅草岳」といった名山を眺めることもできるから、山座同定が忙しい。山頂で地元の登山者が居合わせれば、近隣の山のことを聞いてみるのもいいだろう。
ぼくは初めて蒲生岳に登ったとき、そうした山岳の大展望よりも、じつは眼下の只見川の風景に心を奪われた。ちょうど川を挟んだ向かい側にそびえる柴倉山・鷲ヶ倉山との間を縫うように流れる只見川が、深くて青い水を下流へと運んでいる。本当に心に残る風景である。
尾瀬沼を源にする“太平洋側”の県の川にもかかわらず、阿賀川(新潟県では阿賀野川)に合流して日本海へと注ぐ。支流でありながら水量が豊富で、少し上流にある田子倉湖までが川の上流部となり、蒲生岳のあたりにくると中流域になる。とてもゆったりした川の流れで、のどかな風景。これはずーっと眺めていられそうだ。
■南斜面を下山するのが安全策
下山は、南の久保コースをそのまま戻るのがよいだろう。というのは、北に下りる小蒲生コースは崖のように切り立った垂直の鎖場が連続するためだ。まあ、熟練者にとってはアスレチック感あふれる楽しいコースではある。ぼくも北のルートで下山した。
ちなみに、南と北のどちらから下っても、同じ登山口で合流するのでご安心を。
下山後は、ちょっと寄り道をしていこう。温泉なら大塩温泉共同浴場が近い。只見川を眺めながら入れる「美人の湯」だ。個人的には河井継之助のファンなので、この近くにある記念館ははずせない。司馬遼太郎の『峠』を読んだことのある人なら、感涙間違いなしの素晴らしい施設である。
ついでながら、本好きな人には「たもかく本の店」もおすすめ。探していた登山関連の古本を、ぼくはここで何冊も購入した。
<低山トラベラー厳選。只見町周辺の立ち寄るべきスポット>
・【駐車場】蒲生岳登山口駐車場は無料。トイレは向かいの集会所でお借りする
・【電車】JR只見線「会津蒲生駅」が登山口の目の前!
・【日帰り温泉】大塩温泉共同浴場が◎
・【寄り道】「たもかく本の店」には掘り出し物の古本がたくさん!
・【追いハイク】歩き足りない場合は、となりの「只見駅」から要害山へ
・【ファン必見】司馬遼太郎作品『峠』の主人公、河井継之助の記念館とお墓
・【いつかきっと】河井継之助が越えた「八十里越え」も訪ねたい